チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年5月16日
ダラムサラの野鳥・その12
今日は日曜日ということで、久しぶりの「ダラムサラ野鳥シリーズ」
地震後、心が無意識的に緊張状態だったので、息抜きのようなものだ。
前回、鳥を載せてからもう一カ月以上日が経った。
前回、鳥を載せた二日後に地震があった。
今日は地震後32日目。
ダラムサラの気候は日本と少し違って、4月の間に一気に気温が上昇し、春から一挙に夏になる。
30度を超える日も多い。
でも、6月半ばには雨季が始まり、気温は下がる。
4月、家の周りには確認できただけでも4種類の鳥が巣を作った。
番いが、代わる代わる巣の材料を口にくわえ、二羽で安全と判断した場所に巣を作る。
Green-backed Tit と英語で呼ばれる、カラ類の一種は毎年、玄関のドアのすぐ横にある巣箱に巣を作る。
黒斑のある白い小さな卵を5つ生んだ。
卵を産んだ後にはオス、メス交代で卵を温め続ける。
この時期は移動できないので、敵に狙われ易い。この辺の敵は猫、マングース、ネズミ、他の野鳥だ。
猫などが近付くと、外にいる親は大きな声で警戒の叫びを上げる。
多くの場合これに照応して、周りにいた他の種の野鳥も声を上げる。
辺りは、一時騒然となる。
もっとも、猫がこれに驚いて逃げるということもない。
やられるときはやられるのだ。
庭の椿の枝の間にはStreaked Laughingthrushと英語で呼ばれるツグミ類のペアーが巣を作った。
この鳥は年中家の周りにいる。大概、この鳥は歩いてる。
巣は地面に近く猫にやられそうで心配したが、無事幼鳥は飛び立った。
卵は綺麗な水色だった。
卵の写真も、卵を温める親鳥の写真も撮ったのに、なぜか消えてしまいお見せすることができない。
Grey hooded Warbler (Seicercus Xanthoschistos)10cm
この小さなムシクイ類の一種も年中近くにいる。
窓のすぐ下の土手に巣を作った。
その巣は落ち葉の下にトンネルを掘ったみたいで、外からは見分けがつきにくい。
巣の中を覗くこともできなかった。
卵が孵った後の親は忙しい。
オスもメスもせっせと虫をくわえて巣に戻り、うるさく囀るベービーたちに虫を順番に口に入れてはまた、すぐに巣を飛び立つ。
でも、夜は家族みんなでくっついて寝ている。
Grey hooded Warbler (Seicercus Xanthoschistos)10cm
上と同じ鳥。
Green Backed Tit(Parus Monticolus) 15cm
子供は巣だったらもう、親から餌を貰うことはないのかと思っていたが、そうでもないことがわかった。
一羽の明らかにうちで育った子供と思える小鳥が近くの枝でしきりに羽根を振り振り叫び声を上げていた。
すると、しばらくして親鳥と思える小鳥が口にくわえた青虫を枝にたたきつけて殺している。
しっかりぐったりとなった青虫をそのうるさい小鳥の口にほおりこんでいた。
親子の姿かたちはまるで違わないのに、その態度がいかにも子供とその親なのがニンジェです。
この子が親からまだ餌を貰ってた、すねかじりベービー。
生後2週間ほどでしょう。
目が子供だ。
野鳥の平均寿命は一年と知ると、このベービーに来年はもう会えないかもしれないということになり、野鳥も哀れです。
この時期、ペアーで飛び回ってるのが多くて、楽しそうでいい。
短い春だから。
一生?連れ添うタイプと、一期のみのタイプがあるそうだけど。
Asian Paradise Flycatcher(Terpsiphone Paradisi)
朝、窓を開けてヨガをやってるとき、聞きなれない騒々しい囀りが聞こえて来た。
ウ、、、と窓に近づくと、すぐ下に待望の鳥が、それもペアーで乱舞しているではないか。
この鳥、一年以上前にまだ、野鳥撮影とかに凝る前に一度見たことがあった。
その後、ポン湖の近くでオスの白いのを一瞬見かけた。
しかし、いい写真は撮れなかった。
その後は野鳥の本の中でしかお目にかかることができなかった。
野鳥(の本の)中でもこの鳥は特に目立って美しい。
特にオスの体長の3倍にもなる、しっぽの長い「飾り羽」が優雅だ。
顔はなぜかカジキマグロにも似てる。
Asian Paradise Flycatcher(Terpsiphone Paradisi) Male 50cm
このオスはメスと同じ色だが、これは一説には、3歳ごろまででその後は背中が真っ白になり、頭部は黒に近づく。
他の説によれば、オスには稀にこのメスと同じ茶色の背中を持つものがいる、という。
身体が純白で頭が濃いプルーのオスは本当に美しい。
この辺では一番美しい野鳥のひとつであろう。
オスのしっぽも年々長くなるという。
しっぽが長いと飛び回りにくいと思われるが、それでもこの鳥は盛んに器用に枝の間を飛びまわり、さいずり続ける。
その様はまるで、二人でダンスしながら歌い合っているが如くだ。
最近現れた、不思議な鳥。
ツグミ類にも見えるが、嘴が違うし、よくわかりません。
体長は35cmほど。
野鳥に詳しい人は名前を教えてください。
Blue caped Rock Thrush (Monticola cinclorhynchus)18cm
この鳥は私の持ってる「Birds of the Himalayas」というポケット本の表紙を飾る鳥だ。
長く、いつかは出合いたいと思っていた。
ある日、一瞬、目の前に現れ、消えてしまった。
二度と現れない(今のところ)。
Common Hoopoe(Upupa Epops) 31cm
この鳥はインドではとてもポピラーらしく、インドを代表する鳥の一つになってる。
でもこの辺りではあまり見かけない。
これも、朝ヨガの最中、すぐ目の前の枝に泊ったところを撮ったもの。
口に虫をくわえて、きっと、巣で子供が待ってるのでしょう。
Black-throated Tit (Aegithalos Concinnus) 10cm
以下、最近の写真だが、種類としては、すでに紹介済みの野鳥ばかりなので、ここから話を変える。
日曜日とあって、ドルマリンの尼さんたちが家に遊び?に来た。
私は真面目に「サカダワに入ったが、ゴンパでは特にこの期間、何かみんなでやるのか?」と聞いてみた。
尼さん「カンギュル(大蔵経を経・論に分けたときの経)を読む。大体僧院でも全部読む。朝から晩まで読んでると目が痛くなるよ」
私「そうか、そう言えば去年の今頃、自分もランタンというネパールの山奥でみんなと一緒に、ちょっとだけ読んだっけな、、、今年もやってるだろう。行きたいよな。
楽しくていいじゃん」
尼さん「この時期暑くて大変よ」
Black lored Tit (Parus xanthogenys) 14cm
私「手分けして読むんだろ」
尼さん「だから、人が多いほど早く終る。でもだいたい一カ月かかるよ」
私「他には、何か特別なことはないの?」
尼さん「食事に肉が禁止で、夕食も食べない」
私「みんな食べないの?」
尼さん「月の半分まで食べないと言う人がほとんどで、一月食べないと言う人は少ないね。卵もだめね。」
私「でも、だいたい戒律の中じゃ、年中午後には食事取っちゃ行けないんじゃないの?タイとかビルマのテラバーダ系の僧侶たちはいつも夕食抜きだよ」と意地悪コメント。
尼さん「そうね、慣れるとそれでもいいんだろうね、、、尼寺の中にもそういう尼はいるよ、少ないけど」
私「そういえば、思い出せば、ジョーシュという外人坊主はツェンニー・ダツァン(ダラムサラにある論理大学、と呼ばれるが僧院と同じ)の中で唯一この戒律を守り通してたよな。周りのチベット人の坊さんは三食みっちり食べてるね」
Magpie Robin (Copsychus saularis)20cm
私「他には?」
尼さん「他にはね、、、普通のチベット人が沢山僧院を訪ねてくるね。
色んな食べ物などの布施を持ってくる。サカダワの間に積んだ功徳は何百倍にもなるから、みんなこの時期、お経を唱えたり、真言を繰り返したり、五体投地やコルラをする人が多いよ」
Jungle Mynas (Acridotheres Fuscus)23cm
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)