チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年4月26日
地震後、中国政府の対応や募金活動を批判したチベット人作家逮捕
主に、内地のチベット人の記事やブログなどを、英語で紹介するサイトHigh Peaks Pure Earthの4月26日付レポートによれば:
http://www.highpeakspureearth.com/2010/04/earthquake-in-tibet-leading-tibetan.html
ペンネーム<ショクドゥン>として有名なチベット人作家タゲルは「カムで起った地震の被災者たちに送る手紙」に連署した後、逮捕された。
彼は西寧のNationalities Publishing Houseのスタッフであると同時に作家として精力的に活動していた。
最近、2008年のチベット蜂起について論じた「ナムサゴ(天地門)」と題された本を出版している。
この公開の被災者に宛てた手紙の中では、被災者たちへの慰安が示されると同時に、中国政府の救助活動や募金活動への批判も書かれていた。
連署者の中には作家・歌手として有名なジャミヤン・キも含まれている。
レポートによれば:
「4月23日午後5時、西寧警察署の警官が5,6人、彼の職場であるQinghai Nationalities Publishing Houseに現れた。彼らはショクドゥンをまず自宅へと連行し、家宅捜査をした。
写真を幾つか押収した後、彼をどこかへ連行した。
夜10時に再び警官が彼の家に来て2台のパソコンを持って行った。
妻のラツォの話によれば、さらに、朝方3時に警官が来て逮捕令状を家族に渡し、彼の寝具を要求した。
早朝、彼の二人の娘は逮捕令状を持って地区の警察署に向かった。
しかし、彼女たちは父親に会うことはできなかった。
今も彼の行方は分かっていない」という。
地震後、3日経った時、彼は被災地に行こうと思ったが、許可証を得ることができなかった。
仕方なく西寧に留まりながらも、彼は逮捕の日まで救援活動と負傷者へのカウンセリングに忙しくしていた。
この当局によるチベット知識人の逮捕は驚くにあたらない。一カ月前にはゾゲ県でキルティ・キャップと他の先生たちが逮捕され、今も拘束されたままだ。
北西民族学院からはテラン(タシ・ラプテン)とショクジャン(ドゥクロ)が逮捕されている。
この先、我々の内誰が逮捕されるか分からない。
これが今の状況だ。
この先が思いやられる。
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手紙には「自分たちは被災者を救援したいが、あたかも税金を払うがごとくに、何とか団体やグループに寄付するつもりはない。一番良い方法は、誰か信頼できる人に直接現地に行ってもらい、寄付を渡すことだ。
誰が、(この国には)汚職はないと言えようか?(役人が)自分の懐に入れないと言えようか?」と書かれている。
それにしても、こんな時にまた中国当局による口封じの知識人逮捕とは。
こんなことを書いただけでも、中国では逮捕されるのだね。
教育が行きわたっていないので、チベットに知識人は生まれにくい。
第2,3世代と呼ばれる、これらの僅かなチベット人知識人が次々に逮捕されている。
これほど、あからさまな言論弾圧はない。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)