チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2010年4月17日

ジェクンド大地震四日目 死者1339人 不明332人

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遺体の山、ジェグ僧院前当局は地震の犠牲者数を1339人と発表した。
その他、行方不明者332人、負傷者11849人、その内重傷者の数は500人以上。
被災者の数は10万人。

朝方のBBCに、廃墟と化したジェグ僧院前に毛布にくるまれ積み上げられた遺体が映し出された。
午後には僧侶たちが遺体を儀式を行ないながら川に流したり、積み上げられた死体の山に火を放つシーンが流された。

遺体この悲惨な状況の中で法王からの直接の慰めを求める声が上がった。
このような願いは現地からRFAなどにも寄せられていたが、昨日http://www.boxun.com/に法王をキグドに招待することを政府に懇願するという手紙が発表された。

チベット語:http://www.tibettimes.net/news.php?id=2557
英語:http://blog.studentsforafreetibet.org/category/media-coverage/reports-from-tibet/

以下、この手紙を主にチベット語より訳す。

——————————————-

ジェクンド大地震 14.4.2010 ダライ・ラマ法王被災地招聘請願書
2010年4月16日付

地震被災者より胡錦涛総書記及び温家宝首相へ宛てる手紙

胡錦涛総書記及び温家宝首相におかれましてはますますご壮健のことと存じます。

我々の地方が大きな自然災害に襲われた時、お二人を初め共産党政府が救助のために軍隊を派遣され、社会の様々な団体が力を込めて我々を救ってくださったことに対し深く感謝の意を表します。

しかしながら、我々のコミュニティーは仏教に深く帰依し、仏陀シャカムニの教えに従い、代々ダライ・ラマ法王に対し篤信を抱き続けてきました。今、我々は身と心に強く深い苦しみを受けております。今、我々はダライ・ラマ法王が被災地を訪れられ、すでに亡くなってしまった人々を安寧な来世に導き、我々傷つき残された者たちに情けをかけて頂きたいと願うのです。
今日、胡錦涛総書記及び温家宝首相におかれましては、我々にさらなる慈悲の心を起こされ、被災地の人々の心よりの請願を聞き入れられんことを。
我々一万人を超える負傷者は、お二人を初め共産党政府がダライ・ラマ法王との確執を一時忘れ、我々の心よりの願いをかなえて頂くことを深く請うのです。

我々がダライ・ラマ法王をお招きしたいというのは、ひとえに法王により亡くなられた方々を見送って頂き、残された者達の心を癒して頂きたいという、純粋に宗教的な心情に由来するものであり、他意は全くありません。

今、法王が被災地を訪れられ、祈祷の法要をされ、被災者を慰問されることのみが、我々の傷ついた心を実際に癒すことができるのであって、他に方法はないのです。

————————-

ジェクンド首相のサムドン・リンポチェは昨日、ダライ・ラマ法王は今回の地震について深く憂慮されており、もし可能であるなら是非現地に赴きたいと話されている、と伝えた。
http://tibet.net/en/index.php#
リンポチェは「メディアの報告によれば、現地で耐え難い苦しみの中にあるチベット人たちが、ダライ・ラマ法王の加持を得たいと懇願しているという。そのようなチベット人たちの心を知らされ、我々はあたかも己の心が鋭いもので突かれたように感じた」と語り、

「もしも、状況が許すなら、法王としては、直ちに現地に赴くということに何の躊躇もない」

「しかし、現地を訪問するなど考えるだけでも夢のようなものかもしれない。我々は被災者たちがいつの日か法王に逢うことができますようにと、祈願し、行動するしかない」と続けた。

———————————————————————-

以下、現地に入られた日本の共同通信さんの記事を一つ転載。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010041701000124.html

青海省地震発生から72時間経過 重機投入を拡大
【共同】中国青海省地震で17日朝(日本時間同)、がれきの下に閉じ込められた負傷者の生存率が著しく下がる「発生72時間」が経過。被害が集中した玉樹県結古鎮の家屋倒壊現場では、大型重機の投入が目立ってきた。生存者の救助活動とともに、がれきの撤去など復興へ向けた動きも見え始めた。
 結古鎮中心部のコンクリート製建物の倒壊現場では16日、重機数台でがれきを取り除いていた。その作業を見ていたチベット族の女性は「まだ中に人がいるのに」と目に涙を浮かべていた。重機ががれきを持ち上げる中、チベット仏教の僧侶らボランティアが、中に人がいるかどうかを確認し、時折布に包んだ遺体を運び出していた。
 倒壊現場の多くでは夜は作業を打ち切る。標高約3700メートルという悪条件に加え、大型の投光器がないためだ。そのため、救助活動は難航しているが、16日には発生から50時間余りを経た救出劇もあった。
 その一方で結古鎮中心部は16日午後、支援物資を積んだ車両などで渋滞。人民解放軍部隊による炊き出しも増えた。

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ジェクンド大地震 14.4.2010 青海総合放送では相変わらず、温家宝の現地視察と寄付金集め、あとは大型の救援機に物資が積み込まれていくという映像ばかり流しています。
渋滞を抜けてやっと到着した中国の救援隊も高山症状と意志と言葉の問題により、十分には活動できていないようだ。このほど周辺の大学で学ぶチベット人の学生500人を通訳として動員することを決めたとか。

想像してみるといい。もしも、中国が何も要らぬ手を出さず、すべてを周辺のチベット人と外国の救助隊にまかせていたとしたならば、、、、
周辺のチベット人たちは言われなくても率先して同胞を救おうと現地に駆け付けている。

ジェクンド大地震 14.4.2010 もしも、法王が初めから一言チベット人たちに縁援助を呼び掛けていたとしたら、現地は今頃助っ人で溢れ、食糧、医療も今よりは比較にならないぐらい、みんなに行きわたっていたことであろう。
チベット人には高山症状も意欲、言葉の壁も文化の壁もない。

玉樹にはすぐそばに温家宝が乗って来た大型ジェット機も発着できると立派な空港がある。
軍が止めなければ、外国から大型輸送機で質のいい医師、医薬品、食糧等がとっくにバンバン届いているのだ。
中国政府は助けに行こうとするチベット人や外国の支援隊を規制している。

これは天災であると同時に大きな人災である。

父、母を失い取り残された子供たち、大黒柱の夫や妻、子どもたちを失った人々が食糧もなく、傷を癒すこともできず吹きさらしの中、途方に暮れ、廃墟を彷徨っている。

法王は今日次のように語られた。

「物理的な距離が故に、私は今、直接被害者たちの心を癒すことができない。しかし、彼らに伝えたい、私が彼らのために祈っているということを」

キグドではダライ・ラマ法王がいらっしゃるという噂が流れ初めているという。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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