チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年3月8日
3月8日の法王
今日3月8日、法王はダラムサラのツクラカンにお出ましになった。
「テンシュク(法王の長寿を祈る法要)」に呼ばれたのだ。
同じ法要が先週からこれで三度行われている。
今日の施主は豪華トリオだった。
まずサキャ派の座主サキャ・ゴンマ・リンポチェ、次にカルマ・カギュ派の座主ギャワ・カルマパ、そしてゲルク派の密教学院であるギュト僧院である。
昨日まで行われていた「サンワドゥッパ(秘密集会タントラ)」の講義をリクエストしたのもこの御三家が中心だったので、今日はその締めくくりというわけだ。
このタントラはこの三家のもっとも大事な行(密教)の中心となる教えなのだ。
法王もこのサンワドゥッパの行に毎日4時間掛けておられるとか。
外遊中なで時間がない時には、唱えることなく観想のみで超スピードで行われるとも聞いた。
下のアニラたちは朝5時半には寺に向かった。
僧・尼は6時から「サンワドゥッパ」の生起次第(長いバージョン)を全員で唱えることになっているという。
法王は9時にツクラカンに入られた。
みんなと一緒「秘密集会」の後半を続けられた。
これが一時間続く。実際の「テンシュク」は簡単に終った。
いつもはおまけに行われる「白ターラ菩薩の潅頂」(白ターラは長寿の女神)も行われず、いつもは少しはある「お話」もなかった。
実に、法王をちゃんと撮るのは、野鳥を撮るよりも難しいと判明。
(へたくそ写真ばかりだけど、なんせ法王の写真だから沢山載させてもらいます)
最近目立つようになったのはスリランカの僧侶たち。
タントラとは遠い教えに従う人たちのはずですが、色んな複雑な理由でここに座っておられるように見受けられました。
今日、参加した各僧侶、尼僧には全員に550ルピー!配られた。
これは布施としては破格の金額。
いつもは50~100ルピーだ。
さすが御三家の力が示されたということか。
これを見た私は家に帰って、今日さぼって寺に行かなかった二人のアニラに向かって「なんで今日さぼったのか!このアニゴンパ(尼僧院)に入る1100ルピーをミスってしまったではないか。残念なことであっと」と嘆いた。
寺に行った他の二人はほくほく顔で帰って来た。
明日からまた本当の僧院に帰らないといけないが、いい小遣いができたようだった。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)