チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年1月17日
ヒマラヤを越え、亡命を試みたチベット人たちがネパール側で逮捕
ネパールのドラカで、亡命を試みた10人のチベット人が逮捕される。
1月17日付けNepalnews.com
ドラカの地方警察は、ネパール領土に不法に入国したチベット人を少なくとも10人逮捕した。
Kantipur FM 放送によれば、チベット人たちは1月15日に逮捕され、今日、入国管理局に引き渡されるという。
8人の男性と2人の女性が Barang VDCのJagateから来た警官により逮捕された。彼らはLamabagarを経由してネパールに越境してきた。逮捕者の氏名は公表されていない。
ネパールを経由して、ダライラマの指導下で反中国の抗議活動に参加するためにチベットを離れるチベット人がこの数年増加している。このことを中国政府は懸念している。
中国政府は、ネパール政府に対し、領土内であらゆる反中国活動を許さないことを繰り返し要請している。
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ドラカと言う場所は、大まかにはカトマンドゥとチョモランマを直線で結んだ中間点辺りだ。
この辺りで越境したチベット人が逮捕されることは稀だ。
彼らは明らかにヒマラヤの国境の峠を歩いて超えた人たちだ。
亡命を目指すチベット人は冬に国境を超えることが多い。
理由は、チベット側の警備が手薄なこと、道中の障害となる河が凍結して渡りやすくなること、降雪が少ないことなどだ。
それにしても、厳寒の峠越えは命がけとなることも多い。
彼らも高い峠を越え、幾日も歩いた後、やっと車の走る道に出たところで逮捕されたのであろう。
彼らは中国に引き渡される可能性が高い。
この記事はネパールのオンラインニュースに載っていたものだが、最後の方で気になる書き方がされている。
「ダライラマの指導下で反中国の抗議活動に参加するためにチベットを離れるチベット人」という書き方は全く中国政府のプロパガンダを踏襲したものだ。
もしもこのメディアが政府系でなく、ただの民間メディアであるならば、ネパールでは政府だけでなく民間も中国側に付いた、とこの記事を読むことになる。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)