チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年1月9日
法王はブッダガヤで
二日目の終わりはジェ・ツォンカパの慈悲の章だった。
講義が終わった時、法王は唐突に「オイ!ツェメーユンテン(真理の祈り)を唱えよう」と提案された。そして
「今も世界中で毎日沢山の人が戦争に巻き込まれ死んでいく。アフガニスタンで、イランで、パキスタンで自爆テロの犠牲になるものがいる。人間が作った苦しみに満ちている。可哀そうに犠牲になるのは主に貧しい人たちばかりだ。
このような人たちに対し、祈りに長けたチベット人が心を清めて祈ることはいいことだろう。
特に、2008年以降チベットでは、可哀そうに、チベット人は長年の圧政に耐え切れず、街に出て平和的抗議を行ったが、それがゆえに多くの人々が殺され、傷つけられた。家族は別たれ、多くの人々が獄につながれた。
チベット全体が傷を負った状態のまま、恐怖の中に置かれている。
「自他伴に破滅に向かうものたちは哀れむべし」と詩句の中にあるように
愛と慈悲、忍耐と正しく広く現実を見る智慧が人の心に本当に生まれるなら、これら人間の作り出した苦しみは自然に消え去るのだ。
このことを思いながら唱えるように」
と唱える前にコメントされた。
ーーーー
関連の二節は以下
特にここに雪の国チベット、仏法と伴なる国に生れし有情たち
悪徳、蛮行、非情なる共産の大群に
喘ぎ打ちのめされし血と涙の流れ
速やかに断たれんがため、愛の力の大群が生れますように
煩悩の魔に惑わされ、その悪行により、
自他伴に破滅に向かうものたちは哀れむべし、
残虐なる者達に、善悪の目を得させるための慈愛、友愛が生れ
吉祥のうちに、すべてが結ばれますように
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)