チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年12月9日
ビデオCDを制作し配布したとして11人逮捕
<中国当局は国家転覆を企てるビデオCDを制作したとしてアムド、ゴロック地区のチベット人11人を逮捕した>
http://www.tchrd.org/press/2009/pr20091208.html
TCHRD(チベット人権民主センター)に寄せられた信頼できる情報によれば、
中国当局は国家転覆を企てる歌を吹き込んだビデオCDを制作し、流布させたとして僧侶を中心に11人のチベット人を逮捕した。
12月4日、公安は青海省ゴロックチベット族自治県マトゥ地区Matoe County (Ch: Maduo Xian)にあるツァコ密教僧院とカコル僧院に所属する11人を逮捕した。
情報によればこのビデオはこの二つの僧院の僧侶5人が共同で制作したものだという。
5人とはツァコ僧院の3名:僧院長のガクスン23歳、ノベイ、シェラップ・ニマ25歳(ヨギー・行者)
カコル僧院の2名:トゥルク・ツェパック28歳(活仏)ともう一人の名前不詳の僧侶
CDのタイトルは「チャクドゥム・マルポ(血の予言)」。
今年9月1日にリリースされた。
歌詞の内容は、亡命中のチベット人リーダー、ダライ・ラマ法王に対するノスタルジックな抒情詩、去年以来の大規模なデモにより死亡したチベット人に対する哀惜と無力感、1959年来の中国の失策と野蛮な暴力、鉱山乱開発などについてだ。
ビデオCDの中では曲と一緒に去年からの中国当局のチベット人に対する暴力や殺人のシーンが多く紹介されている。
このビデオは以下の6人の手によりマトゥ地区の内外に約5000枚が無償で配布されたという。
1、ギャボ 41歳(元ツァコ僧院僧院長)
2、ゴワン 23歳(ツァコ僧院僧侶)
3、タシ・ニマ 33歳(ツァコ僧院戒律師)
4、マルキ 40歳(カコル僧院僧院長)
5、ケンポ 25歳(カコル僧院僧侶)
6、ガラップ・ドルジェ 46歳(ツァコ村村民)
逮捕後、この6人には罰金一万元と保釈金一万元という条件の上にさらに12月10日までにすべての配布したCDを回収するようにと命令され、さもなくば再逮捕すると言い渡された。
CDは広い範囲に配布されていることもあり、結局この回収は不可能なことなので、いづれ彼らも再び逮捕されるとみられている。
中国当局はこの数年チベット人作家、写真家、ブロガー、出版社など直接的に抗議活動に参加していないが、チベット人たちの権利、文化、宗教あるいは脆弱な環境に対しチベット人としての意見を発表する者たちをターゲットに逮捕し刑を与えている。
先月にも「痕の残らぬ拷問」と題されたアルバムを発表した人気チベット人歌手タシ・ドゥンドゥップを逮捕した。
同じく秘密裁判により甘粛省の甘南中級人民法院は11月12日作家、写真家でもあるチベット人僧侶クンガ・ツァヤンを「国家機密漏洩」の罪で5年の刑に処した。
以下略。
ーーーーーーーーーーー
中国政府は明日の世界人権デーや法王のノーベル平和賞受賞記念日を前に、この日をあざ笑うが如く次々とチベットの勇気ある文化人を逮捕し無法裁判に掛けるということを繰り返しています。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)