チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年12月7日
「08憲章」の“仕掛け人”、劉暁波さんは今も獄中
以下、褒めたい産経さんの社説。
【産経抄】12月7日
中国の知識人303人が、人権の保障や共産党の一党独裁体制の終結を求めた「08憲章」を、インターネット上に発表したのは、昨年の12月、世界人権宣言60周年にあわせたものだ。“仕掛け人”とされる作家、劉暁波(リュウシャオボ)さん(53)は、このとき当局に拘束され、今も獄中にある。
▼劉さんといえば、1989年6月4日の天安門事件で、学生支援のハンストを行い、武力鎮圧が始まると、徹底抗戦を叫ぶ学生を説得して、被害を小さくしようと尽力したことで知られる。事件後、当時の学生指導者や知識人の多くが、海外に去ったり、実業界に転じたりするなか、国内で民主化活動を続ける筋金入りの人物だ。
▼あれから1年、中国当局の厳しい言論統制のなか、憲章への署名は1万人を超えたという。日本でも、「08憲章」の内容と、詩人でもある劉さんの存在を広く紹介したいと、大阪在住の作家、劉燕子(リュウイェンズ)さんらがこのほど編集したのが『天安門事件から「08憲章」へ-中国民主化のための闘いと希望』(劉暁波著、藤原書店)だ。
▼「編者解説」のなかで劉燕子さんは、アメリカやヨーロッパに比べて日本の知識人が、中国の民主化や人権の問題に関心が薄いことを嘆き、「中国批判は反中国の右翼というレッテルを貼(は)られるというおかしな状況」に首をかしげている。
▼実は劉暁波さんは、ノーベル平和賞の候補の一人ともいわれてきた。実際に受賞したオバマ米大統領が、先月中国を訪問した際、劉さん釈放の期待もあったが、かなわなかった。
▼さて、世界人権デーの10日、民主党の小沢一郎幹事長が、約150人の国会議員を引き連れて訪中する。何をしにいくのか知らないが、せめて「08憲章」に目を通してから、出発してほしい。
産経新聞 2009.12.7
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)