チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年10月24日
ギャワ・カルマパのチベット環境講座
今日はギャワ・カルマパがダラムサラの街中にあるTCVニマ・ロプタ分校のホールにお出ましになり、環境についての講義を1時間半ほどされました。
今日は世界的に「環境行動デー」ということでCO2濃度を350ppm以内に抑えるために具体的な行動を取るという日だったのです。
ちなみに現在は387ppmだそうです。
正直、350ppmは法王が最低国連総長にでもならないと不可能そうに見えますが、チベット人はこの環境問題には関心が高いのです。
これも、身の回りというより、チベット本土の環境についてですが。
「中国じゃなくて自分たちが管理していたらどんなに環境に優しかったろうに!」との思いがふつふつと湧いてくるからでしょう。
カルマパはスライドを使いながら、最初は宇宙の話から始め、銀河、惑星、地球、チベットと順序よく仏教的でなく科学的宇宙観に基づいて説明されました。
銀河系の中における太陽の位置を示す。
須弥山・マンダラ仏教宇宙観しか頭にないラマとは一味違います。
(しかし、見方によればちゃんと須弥山宇宙に似てないこともない)
惑星の図。
このチベット語も我々のいう「水金地火木土天海(冥はなし)」と同じ意味です。
これって中国から来たのかね?
カルマパは地球を指しながら、「地球は暑すぎず、寒すぎずで丁度いい具合に収まってるという。もっともこっちが環境に適応しただけともいえるが」と冷静です。
永久凍土の凍解に従い、地表からの二酸化炭素排出量は増加する。
広大なチベットの草原をヤーなどの家畜の力により自然に従い守り続けてきた遊牧民を中国政府は牧草地から追放し集団アパートに強制移住させている。
中国が計画中と言われている、「ヤルツァンポ川の水を黄河に引く」計画概念図。
ヤルツァンポ川はチベットのカイラス山の麓に発し、下流域においてはインドとバングラデッシュの耕地を潤し、人々の飲料水ともなっている。
それをつまり盗もうという大がかりな計画だ。
カルマパはチベット全土の環境保護の守護神と見なされつつあります。
お忙しい法王に代わって、環境プロモーターのシンボル役を買って出ておられる訳です。
最後にちゃんと、プラスチックを使うな、燃やすな、環境を常に清潔にせよ。
外国ではウンチを流すのに多量の水を使うが、これは如何なものか?
水も最低の量にせよ。
歯を磨くときは蛇口を閉めろ。
電気も節約するように。
といろいろ細かい生活上の注意点についても優しく説かれていました。
「仏教ではすべての現象は依存していると説く。空の話が解らなくともこのことは解るだろう。だから仏教徒にとって環境を大事にすることは当たり前のことだ」と話されました。
今日はTCVの本校で「運動会」が開かれているので若者の参加者は少ないようでした。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)