チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年10月20日
今日から再び法王のティーチング
今日から三日間のティーチングはベトナムを中心とする東南アジア諸国のリクエストで行われます。
このケースはおそらく今までに無いことでしょう。
最初にベトナム語での般若心経読経が行われました。
「アムヤ~~~!、、、」と始まり何ともいえぬエキゾチックな節まわしで興味深いものでした。
法王は突然、英語で講義を始められた、
曰く「今日の講義をするにあたり、ちょっと言語上の問題が起こった。
シンガポールとホンコンの人たちから英語で講義してほしいとリクエストがあった。
どうも、彼らは私の英語の能力を試験したいみたいだ。
弟子が先生に対し試験をするというのは良くないことだ。ヒヒヒ、、、、
ともあれ、普通の話は英語でも何とかなるが、仏教の哲学的説明になると私の貧しい英語ではおぼつかない。
仏教哲学まで「Poor・貧しい」ものになってしまう。
だからその部分はチベット語でやることになろう」と。
ということで、今日はほぼずっと英語でした。
なぜか、英語になるとぐっと内容が一般初心者向けに解りやすくなる。
ですから、今日以後三日間のティーチングは英語が少しでも解る方は是非ともなれべくすべて聞いていただきたい。
ライブでなくてもいつでも、ダウンロードなどすれば電車の中でだって聞くことができるのです。
http://www.dalailama.com/page.288.htm
実際、なぜネット上に日本語版がないのか少し不思議なぐらいです。
ちゃんとライブで訳されているのです。
どなたかマリア様にリクエストすればいいのではないでしょうか?
ただ、遠慮してるだけと思いますから。
今日の「四つの真理(苦集滅道)」のお話は、繰り返しますが非常に丁寧で解りやすいので内容は各自がアクセスして聞いてください。
法王は何度も「拝んだり、祈願したりばかりが仏教じゃない、本当は批判的態度で仏教を勉強し、分析し、何度も考え、自分の経験に照らし、納得を積み重ねること、これが大事だ。勉強することだ。苦しみは知らないことからおこるのだから」とおっしゃっていました。
写真は珍しいルーマニア・グループ。「法王は80人~90人ルーマニアからさえ来ている」と最初に嬉しそうに指摘されました。
これからしばらくすると法王が日本を訪問されることになっていますが、本当は別に会場に行くことが目的ではないはず。
法王のお顔を拝みに行くことが目的ではないはず。
法王の話の内容を理解することが目的であるはずです。
法王の教えの日本語訳も沢山出ているわけですし、今では英語でよければほぼ年中、雨や嵐のごとくに法王の教えを聞くことができるのです。
「空」とか最初は難しそうに聞こえる部分もあるかもしれませんが、ある程度何度も聞いた後、時間を作って(これが一番難しい!)、よくよく本気に考えてみることです。
はっきり「このことだ」(必ずしも中観帰謬論証派でなくてもいいから)と解るまで少しは努力していただきたい。
もっともその前に「苦」の認識が無いと効果が期待できません。
この方が今の日本人には難しいのかも?
第一、「楽」は「苦」を前提に成り立つ、相対感に基づく「感覚」に過ぎないし、「解放」は「束縛」あっての話だし、「空・ない」も「実体・ある」が認識されないと話にならないというわけです。
だから、もちろん「空も空」です。
すべての現象は「空」だから「空」も「空」の仕事(誤解を消すこと)ができるのです、、、となんだか「控控さん」になってしまっちゃった!
まずは(難しい)密教は後にしてもいいから、というか「空を(体験レベルでなくとも)最低の知的理解さえないものには「密教」も言葉のみだ」と法王が繰り返し説かれるように、本当の仏教徒になりたければ苦しみを解くカギ「空」にまずは興味を持ってほしいと思います。
今日は生意気なことばかり言ってすみません。
日本では(外国と違って)「空」の話は祭り上げられてばかりで、解らなくてもいいものの如くに思われてるように見えます。
小学校から因果律について子供たちに教えるなら、一緒に「空」も教えればいいのにと思ったりします。
実際、チベットに関わっても、法王の教え(仏教)を知らなければ、そのことがその人の幸せのためになるかどうかは疑問ですし。
左のボケ写真はティーチングの終わりに退出されるときの最後の一枚。
この時、法王があまりに接近されレンズ上で目が会った。
とっさに私はカメラを外すと法王が目の前でにっこりされ、手を出された、握手をして頬を一撫され、ヒヒヒ、、、と言いながら去って行かれた。
このところ写真を撮ってるので法王の近くにいることが多いのに、レンズの中の姿だけで、いつも直接には祝福の目配せも浴びることなく、残念なことではあると思っていたところでしたが、今日はだから特別、嬉しかった!
積もった欲求があれば一瞬の「雷」の如くの欲求解放もあるわけですが、それもすでに記憶のみ、過去は「夢」のごとしです。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)