チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年10月16日

法王ダラムサラ・ティーチング二日目

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16.10.09 ダラムサラ ティーチング以下、まず今日の法王のお話の最初の部分です。

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オーヤータ、、、(さあーてーと、、)

経に曰く:「如何なる悪もなさず、善を増大し、己の心を制御(統治)する」これが仏の教え、と。

仏の教えは、他を害したりせず、他を利益すること。
他を利益する行為を善と呼ぶが、徳不徳(善悪)というものはその結果によって定義されるものだ。
その果が幸である行為を徳(善)と呼ぶ。
その果が苦である行為を不徳(悪)と呼ぶ。
だから、「如何なる悪もなさず、善を増大し、、」と説かれる。

しかし、これだけでは仏の教えの特徴を表すことはできない。
世界中のほとんどの宗教において「愛・慈悲」は説かれている。
「忍耐」も説く、だから他を傷つけることを諫めている。
他を利益することも教えている。
教えられているだけでなく、みんなも知っているようにキリスト教であろうとイスラム教であろうと社会活動をやっている。
貧しい人を助けるために働いている。
たとえばキリスト教徒たちは人種や地域を選ばず教育や医療の分野で多くの人々を助けている。
素晴らしいことだ。
だから、このことは仏教内外に共通のものと言える。

そのあとの「己の心を制御する」という、この点が仏の教えの特徴と知るべきだ。
これはどういうことかというと、まず心が制御されていないことを認識し、
この制御不能の原因を無くすために対策(対治)を行って、これを取り除くということだ。
心を制御不能にしている原因は煩悩。
煩悩の基は我執。
我執には荒いレベルのものから微細なレベルのものまでいろいろあるがとにかく「我執」だ。
解るか?
だから心が落ち着かない原因は煩悩。
貪瞋痴の煩悩の基は我執だ。

この場合は「人(個人存在・プドガラ)」に対する執着。
これを捨てるために「人無我」を説く。
この「人無我」に慣れ親むこと(瞑想)により心を納めるのだ。

縁起の空、縁起の見解、、、縁起にも粗・微がいろいろあるが、、、
まず粗い縁起の見解により、縁起と無我に慣れ親しむことで、「我」をつかむことから離れていくことにより、じょじょに煩悩を滅して心を制御できるようになる。
これが「己の心を制御する」と言われていることだ。

この「己の心を完全に制御する方法」を「無我(無実体・無自性)を知る智慧」による、とするのは大・小乗に共通だ。

もう一つの方法として「菩提心」に慣れ親しむというものがある。
利他の菩提心に慣れることにより、我が実在するという考えを減少させるという方法だ。

この我が実在すると見ることからくる自己愛により、世の不徳のほとんどがなされる。
例えば十不善もほとんどは自分だけがよければよいという利己心から他人を無視して、その上軽視して、殺し、やり、盗む、そして嘘、中傷、暴言、無駄話、 悪意、害心はもちろんだ悪見にはいろいろあるが、何れ利己心から来るものばかりだ。

我を実体として捉える我執と自分だけを大事にする利己心。
利己心に対するものとして利他心に慣れ、智慧を学んで実体視に対す。
方便として菩提心を学び、一方的に自分のことばかり考えることの対治とするのが大乗の特徴だ

「悪を捨て善に努める」だけでは仏教とは言えない。
特にこの無我を習修することにより「心を制御する」ということが仏教の特徴なのだ。

、、、、、

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15.10.09 ダラムサラ ティーチング7で始まり、午前中はゆっくりと「無自性」について様々に説明されていました。

午後の初めには少し早目に表の空の其々の異名と、その裏に隠された其々の修行道上の要点について解説された。
今日中にこのテキストを終わると午前中に予言されていたのに、2時半の時点でまだ半分も残っていた。
終わるのかな?と自分が心配する必要もないのに心配になりかけたころ。
「さあ、ここからはロケットで行くぞ!(コケット・タン・ギ・イン・ダ」と一言。
3時に終了予定だ。

みんな身構える。
これは法王が最後の方になってどんどんスピードを上げていくことはいつものことだが、今日は時間の割に残りの量が多過ぎると思えたからだ。

普通でも法王のお経を読むスピードについて行くのは簡単ではない。

それからはもう夢のような走馬灯のようなメロディーに乗って。
駿馬は走り続け、、、

最後に:

(中村訳)

「現象界というものは、
星や、眼の翳、燈し火や、
まぼろしや、露や、水泡や、
夢や、電光や、雲のよう、
そのようなものと、みるがよい。」

師はこのように説かれた。スブーティ上座は歓喜し、そして、これらの修行僧や尼僧たち、在家の信者や信女たち、また、これらの求道者たちや、神々や人間やアスラやガンダルヴァたちを含む世界のものどもは、師の説かれたことをたたえたという。

切断するものとしての金剛石、聖なる、尊むべき、智慧の完成、終る。

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法王「ヤー! 丁度3時だな」

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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