チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年10月14日
明日から法王のティーチング
法王は昨日朝、3週間に渡るアメリカ、カナダ遠征を終えられダラムサラに無事帰還されました。
オバマ大統領には会えなかったものの収穫はごっそり、手ごたえも十分だったと思われます。
ですからもちろん、いつにも増す沿道の歓迎ぶりだったようです(私は出迎えに行ってない)。
帰られたばかりなのに、もう明日から、中一日置いて22日までの正味7日間、
午前、午後とティーチング(18日は観音菩薩の潅頂)をされます。
74歳なのに、本当に本当にごくろうさまです。
明日の15日から18日までは台湾グループのリクエスト。
台湾からこのティーチングのために1000人以上がダラムサラに押し掛けて来られました。お陰でダラムサラのホテルや寺はどこも満杯状態。
20日から22日まではシンガポールを中心とする東南アジアグループのリクエストです。
ちなみに今回の日本人グループの人数はというと25人ほどです!
毎日ヒマラヤ晴れで天気は上々なのにね、、、日本人はとにかく忙しいというわけでしょう。
肝心なティーチングの内容は、台湾グループに対しては
1、 金剛般若経(ドルジェ・チュパ、金剛能断般若波羅密経)
2、 ゲシェ・チェカワ著 「心を統治するための七つの要点(仮題)」(ロジョン・トゥンドゥンマ)
3、 ジェ・ツォンカパ著 「菩提道の三つの要点」(ラム・キ・ツォオ・ナムスン)
東南アジアグループに対しては特別のテキスト指定はなく
「四諦」について解説されるそうです。
この中、「金剛般若経」の解説を法王がされることは稀だと思います。
私個人初めてです。
この「金剛般若経」はクマーラジーヴァ訳、玄奘訳が古くから中国で有名なので、きっと台湾グループが特別にリクエストしたのではないかと考えます。
このお経の成立はAD150~AD200と考えられています。
大乗の最初期の経典で、まだ大乗、小乗という言葉すら使われていないし、全篇「空」について説かれながら「空」という言葉も出てこない。
つまりまだ「空」という言葉が生まれる前のころの経典なのです。
法王は去年も「ダンマパダ」を講義されたしでこのところ古い経典が目立ちます。
どんな解説をされるか興味しんしんです。
次の「ロジョン」はアティーシャの流れをくむカダン派の行の中心になる教えの要約です。
「トンレンの行」とともにゲルク派を中心に後代のチベットの行者に大事に受け継がれてきた「心を清め、コントロールするための戒め(注意事項)」を集めたものです。
三番目「菩提道の三つの要点」(ラム・キ・ツォオ・ナムスン)はジェ・ツォンカパの主著「菩提道次第広論」を数ページに極約したものです。
三つとは「出離」「菩提心」「(空性を理解する)智慧」であります。
法王はこの数ページを請われるなら一カ月分に伸ばしてでも講義できるのです。
最後の「四諦」も同様、数分から数カ月まで伸縮自在です。
いつものように以下でライブのティーチングを聴くことができます。
但しチベット語、英語、中国語だけです。
会場にくればマリア様の日本語訳を聞くことができます。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)