チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年8月9日
チベットのため自殺した少年の遺詩集「拘禁されたチベット」
昨年10月18日、チベット人を鼓舞するために自殺した少年、ユン・ルンドゥップの話は去年の以下のブログでレポートしました。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2008-10.html
彼の自殺後、チベット人によって彼の残した約25の詩がまとめられ、
【拘禁されたチベット人】という1冊の本となり出版された。
以下は彼に関する8月4日付ウーセルさんの記事をH女史に翻訳して頂いたものです。
http://woeser.middle-way.net/2009/08/blog-post_04.html
●民族のため命を投げ出したアムドの中学生・永冷智(ユン・ルンドゥップ)と
彼の詩集【拘禁されたチベット人】
2008年10月18日、青海省黄南チベット族自治州チェンツァ県の第一民族中学の学生・永冷智が学校の教室棟の3階から飛び降り自殺を図った。
彼の実家は青海省海北チベット族自治州カンツァゾン県にあり、牧畜民の出身である。
去年3月のチベット騒乱の際には、
彼はカンツァゾン県のある学校で、中国国旗を吊るしているその旗竿の上にカターをかけていた。
その後9月に転校し、チェンツァ県の第一民族中学で学んでいた。
教師の話によると、永冷智は成績も良く、大変真面目で優秀な学生だったという。
彼の残した遺書は、死をもって人々のチベット人の境遇への関心を呼び起こし、
また世界に向けてチベット人の身の上に自由がないことを証明している。
そして、チベット人が団結して努力し、教師や学生がチベット語を積極的に使用でき、民族の文化が保護・継承されていくことを望んでいる。
彼の自殺が注目び、外国メディアによって報道されたことで
チェンツァ県第一民族中学校長は免職となり、
クラス担任は最も条件の悪い全県唯一の畜産地区へと移動になっている。
彼の自殺後、チベット人によって彼の残した約25の詩がまとめられ、
【拘禁されたチベット人】という1冊の本となり出版された。
本の裏表紙には彼のこのような詩が書かれている。
かつて遥か彼方の異郷を眺めたことがある。
かつて広大かつ幽玄な湖を眺めたことがある。
かつて心の中の痛みを歌に乗せ涙を流したことがある。
私に何があるだろう?
たった少しの自由に生きる権利すら持てないのに。
―――ユン・ルンドゥップ(永冷智)―――
【拘禁されたチベット人】の本の中にはこのような詩がある。
一
私のふるさとにはたくさんの野良犬がいて
食べ物を探しては、あちこちをさまよっている。
ふるさとの人々はいつも余ったおかずを与えていて
次第に互いに面識ができ、
行き来がはじまる。
これらの野良犬はふるさとの人々によって慈しみ養われていた。
しかし、
しかし何が起こったのだろう、
野良犬たちがふるさとの人々の恩に背を向けた。
野良犬の犬歯と陰謀がふるさとの人々を怯えさせ、
苦しめて止まない。
あぁ、なんて無情で残虐な野良犬よ。
二
果てしない草原で
野良犬たちはふるさとの人々の食べ物を楽に得るだけでなく
かえって自らの血も肉も
自分たちの食べ物までもむさぼり求めている
恥知らずな野良犬
誰も信じてなどいない
慈悲と情けは必要とはいえ、
もしあなたが彼らに対して慈悲心を持てば
最後には自ら命を失うだろう
野良犬がどこから来たのか分からない
だけど彼らはさまよい、私のふるさとへたどり着き、
・・・・・
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訳者注:
この【拘禁されたチベット人】の中身の写真がないのでここまでしか訳せない、とあります。
(デジカメで本を1ページづつ撮影して、それをもとに誰かが中国語に訳したようです。
そしてここから先のページは撮影できなかった、とあります)
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)