チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年7月3日

チベットの自然

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tibet flower去る6月29日、ダラムサラのTCVホールで「野生生物保護」を訴えるイベントが開かれた。
http://phayul.com/news/article.aspx?id=25036&article=Karmapa+appeals+for+wildlife+conservation
主催したのはWildlife Trust of India (WTI) と Care for the Wild International (CWI).で参加者の多くはTCVの生徒たちだった。
正面の垂れ幕には法王の
「チベット全体が、人々と他の生態系が平和で調和のとれたバランスを保つ、自由な避難所になることが私の夢だ」という言葉が掲げられていた。

この日のチーフゲストは先週金曜日に24歳(先週25歳とお知らせしましたが、これはチベット式では25歳ということのようです)のお誕生日を迎えられたばかりの17世ギャワ・カルマパ。
ギャワ・カルマパは「動物は我々の敵ではない。我々はみな結び付き合っている。すべての動物は食物連鎖の中で独自の環境的役割を担っている。もしもその中の一つを取り除けば、すべての構造に影響する。人間の利害を考えても、野生生物を救うことは、結局自分たちを救うことになるのだ」
さらに、「仏教的観点ではすべての有情は自分の母親だ。動物などの他の生き物を害してはならない。しかし、これは実際には無視されることも多い。ある者は環境は十分大きいので自分一人の行動など影響しないであろうと考えよう。しかし、個人の役割は大きいのだ。その人の性格と信の差が行動の差になって現れるのだ」とおっしゃいました。

tibetランタン谷を通してチベットの自然の一部を紹介したが、実際チベットほど動植物の豊な場所はないのです。以下はダライラマ事務所のホームページからの抜粋です。

http://www.tibethouse.jp/enviroment/envi06.html

チベットには、およお1万種の高原植物、118種の哺乳類、505種の鳥類、49種の爬虫類、44種の両棲類、61種の魚類が科学的に確認されている。これらの植物の4分の1はチベット固有のものであり、文化的経済的に高い価値を有するものである。植物のうち、1300は樹木あるいは低木種であり、約1000種のチベット、中国、インドの伝統医学で用いられる薬草もある。野生動物もチベット固有種の率が高く、野生のヤクのトロン、野生のロバのキャン、チベット・ガゼル、チベット・アンテロープ、獅子鼻猿、ムーリ・ナキウサギ、チベット茶色熊などは、チベットにのみに見られる。乏しいデーターからは、動物固有種の正確な比率を評価するのは難しい。ローウェルは、チベット高原の多くの動物は、きわめて高地の生活に適応した単一の亜種であろうと注意している。(Rowell 1990 b)
中略

tibet flower2チベットの信仰と訓令による良き伝統があるとはいえ、こうした地域には、このような公的な保護が大いに必要である。1つの理由として、増大する中国人は、そのような規則に縛られていないことがある。しかし、そうした保護手段が、うまく機能するためには、それが文化価値、地方住民の生活と調和したものである必要がある。さもなければ、とりわけ辺鄙な地方では、こうした領域は、名ばかりの「保護」地域となってしまいがちである。真の保存は、その地域の自然資源を利用する地方共同体との協調と持続可能な利潤が、地域住民にもたらされるようにすること、を含んでいなければならない。人々の生存のための需要を住民による経営へと統合する手段を有する、生物圏保護と動物公園が、これを達成するひとつの可能な道である。
中略

中国官憲及び軍による無制限な野生動物狩猟の報告が入り続けている。最近になって富裕な外国人客のためのグロテスクな狩猟ツア―絶滅危惧種の戦利品が組織され、定期的に中国官製のニュース・メディアに載っている。保護地域網の拡大の結果、チベット人共同体は、自然資源基盤への接近を制限され、生存に対する新たな脅威におびえている。そして、多くの重要な環境とその住人は、口先だけの保護すら受けていないのである。

ーーー

tibet flower3今回ランタンで幸運にもブルー・シープと間近に出会うことができましたが、これもシーズンが終わり他にほとんど誰も人がいなかったからでしょう。

チベットの観光化は急速に進み、野生動物は益々山奥に追いやられ餓死するものも出るでしょう。
お花畑も踏み荒らされることでしょう。

このところ、チベットの高山植物をもっと見たいとネットを見ていたら、「チベットに花を見に行こうツアー」は山のようにあることを知りました。中国人もドット押しかけているようです。
日本人は花を避けて歩くでしょうが、中国人はどうでしょうか?

それにしても、嘗てのチベットがどれほどの動植物と人々の楽園であったかが、夢のようにしのばれます。

チベットの花を見たい人にサイトを二つ紹介します。
写真はこれらのサイトからです。
http://osyorokoma.net/tibet/

http://www.tibetplant.com/frame.html

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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