チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年6月29日

ザンカの計画/ランタン五日目

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ランタンの朝ザンカ(ザンスカール)のこと。

昨日、ザンスカール出身のデブン僧院のゲシェと仕事の事で会った。
仕事というのはザンカに僧院と尼僧院を建てたいので手伝ってくれ、図面を書いてくれ、というものだ。
この話、一年前ぐらい前から有って「是非一度、私と一緒にザンカに行こう!」と誘われていたのだったが、私は「ザンカは遠いよね、、、時間かかるしね、、、」と言って適当に無視を続けていた。

今回ランタンから帰ってくるなり彼から会いたいと電話があった。
私の頭の中ではすぐに「ザンカ、、、夏、、、花、」と繋がって、口調も軽く「いつでも、会いましょう」と言ったのだ。

キャンジンの子供計画は二つ、ザンカの中心、カルシャ寺に新しく100~150人用の僧房、図書館、ホールを建てるのと、
カルシャ寺(僧院}の上の方にある、ドルジェ・ゾン尼僧院にも100人用の同様の施設を建てる、というものです。

別に実際に敷地を見に行かなくても写真だけでも、図面は描けるわけですが、わざわざ行きたくなったのです。

尼僧院の方は図面ができればお金の当てはあるそうです。
しかし男の子用の方はまだ、当てもないようでした。

キャンジンの子供2しかし、彼の意志は固いようでした。彼はどうしてまた新しく僧院が要るのか?との私の質問に答え「最近僧侶になるものが減ってきている。カルシャの多くの僧も家に帰っており、僧院にいる者は少ない。この原因の一つは寺の老朽化にある。
最近フランス、スイス、ドイツなどの援助でザンカにはいい学校が沢山建った。
これはいいことだ。
伝統的には子供の内一人は僧侶にさせたものだ。しかし、お陰でこれが崩れ始めている。
ザンカは伝統的に本当に仏教が生きてた土地だった。しかし、今モスリムが沢山入り、外人も来て伝統的な社会は崩れ始めている。
でも土地の人々は仏教を欲している、法要も多く必要としているのだ。

ヤ-法王も常に自由の地にあるヒマラヤ地域の仏教徒は仏教の伝統を守るよう頑張らないといけない、とおっしゃっている。
私は特に新しい僧房ができたら、故郷に帰りタクツェ(問答)を始めようと思っているのだ」と話されていました。

私が花の写真が撮りたいから行こうと思う、と言うと、「そうか、8月15日から三日間法王がザンカに来られて教えと潅頂を行われることが決まったし、7月終わりにはカルシェ・ゴンパで仮面舞踏のお祭りがあるからそのころにどうか?」と。

タルナにたなびいていたルンタ「では、、、7月終わりごろ、ラホールのダルチェから歩いて峠を越えてザンカに入ることにする。帰りはカルギル、スリナガール経由で帰ろうかと思う。よろしく」
と言うことになった。

ザンカには古い寺が多いので寺めぐりと花めぐりの旅になりそうです。山はヌン峰7135m・クン峰7067mがあるし。
法王のティーチングもあるという、、、どうですか、みんなでツアーでいきましょうか?

ツアーといえば、ツアーといってもフリー・ツアーだけど、ランタンに来年7月にまたカンギュル読経会があるなら、花見を兼ねて行こうと思ってます。
これも、現地集合フリー・ツアーにしましょうかね?
興味なる方は連絡してみてください。
いや、複数だと花も見つけやすいかと思って、、、、

ついてくるヤギの子供本当は今年の夏はチベットのカム、アムドに入って去年以降の衝突のアセスメントに行こうと、生意気に計画していたのですが、今回ネパールで6っが月ダブル・エントリーのビザした貰えなかった。日本に一回父の法事のために帰らないといけないので、もう今年はチベットにいきにくくなったというわけなのです。

ランタンなどのチベット周辺の地域は平和で政治的な意味は少ないが、間接的には関係があると思う。一口にチベットと言っても地方ごとに色んなユニークな魅力がある。とにかくチベットの山、花、人、宗教、歴史を知れば、チベットが好きになるであろう。好きになれば、それに従って自然に政治的関心も持つようになる、と思うからです。失くすにはあまりに惜しい、美しく不思議な楽しい世界だと思うように必ずなるでしょう。

——————————————————

読経会ランタンの続きです。
第五日目。
その日は日長一日みんなとお経を読でいた。

大体チベットの仏教がここまで広まったのは、チベット人がずっと昔にチベット語で読める仏典をたくさんもっていたことによる。
この辺は日本と違うところだ。普通の日本人は漢語(今はたくさん現代語もあるにはあるが)の仏典が読めなかった。だから、坊さん様の読むお経も意味不明のままだ。
チベットでは普通にチベット語が読める人ならお経の意味は(少し慣れれば}すぐ解るのだ。もちろん深い意味は別段階としてもだ。

昼食今回みんなが読んでいたのは「カンギュル」と呼ばれるチベット大蔵経の仏説部で、全部で100巻以上ある。一巻は厚さ10センチほど。
今回どのバージョンを読んでいたのか、確認しませんでした。

この日の朝は昨日に続いて般若部の中の「十万偈般若」でした。
最初はゆっくりでしたが、なにしろ般若系のお経は繰り返しが多いので、自然に声を出して読んでいると調子が良くなってくるのです。
とにかく「空だ!、、、、空だ!、、、これも、あれも空、外も空、中も空、空も空、、、」とみんなで連呼するわけです。

キャンジン・ゴンパ別館私たち7人だけ、この日から日当たりのよい別棟に移されました。
我々のグループのウンゼ(導師)はティムレというチベット国境間近の村から招かれています。弟子のような三人の若者を連れています。この20歳を越えたばかりの元坊主たちは調子者ばかりで、終始笑いをとっていました。
ウンゼも急におかしな節回しで読み始めたりして笑わせ、お茶の時間には即興替え歌を連発していました。

他の二人の内一人はド・サン、彼は立派に早くお経を読むことができました。
もう一人の私の隣に座っていた中年のおじさんはド・サンと同じブリディムの人。
お経は読めるが速度は非常に遅い。
でも一生懸命、解らない風のところは何度も読んだりして真面目に読んでおりました。

読経は8時から始まって中、お茶の時間を入れて11時半ごろに昼食のカネ。気持ちの良い外で中々うまい飯を頂く。
すぐにまた始まって、でも一時間ほどで休憩時間になる。これが一時間ほど続く。

また、お茶を飲みながら二時間ほど経つと、飯だと言って外に出る。
11時過ぎのは朝食だったと解る。
飯がすむと一旦すぐにまた読み始めるというのが決まりらしい。でもそのあとまた、長い休みがある。
夕方5時を過ぎるころ、カンギュルは終わりとなり、その後ニンマ派のお経セットを30分ばかり唱える。これは私以外はみんな覚えているので、非常に速い。
終わって一旦引けて、夕食がまた7時ごろから始まる。

昼休みに外に出るとたむろしていた女性連に捕まる。
「まあ、ここへ座れ、ここだ、もっと近く、すぐ横に座れ」
と手に木の枝を持ち、地面を叩きながら「結婚だよね。私たち結婚するんだよね」
周りも、「そうだ、そうだ、今日だ、パティーだ!」
もう一人のおばさんが隣のド・サンの腕をつかみ「私はこの人と消えるから、あんたもあれと消えるといい」とド・サンを無理やり立たせる。

男たちも加わり、何だか下の話で盛り上がり出す。みんなヒヒヒ。。。。。と笑いこける。
今まで、中ではあんな真面目なお経を唱えていながら、この様、この落差がチベット的、いやニンマ的でよろしいです。

しかし、その彼女、そのあとみんないなくなって二人になると、「冗談だよ。Sadakaneの知り合いだというし、あんまり調子に乗るといい付けられそうだしね、、、、本当は旦那が居て6歳と3歳の子供がいるよ。カトマンドゥにいるけど、、、お前は子供はいるのか?」とか冗談抜きの話になってしまいました。
<Sadakane>が効いたようでした。

読経会彼女がお茶を注ぎに部屋に入ってくると、ウンゼは素早く「び~~~じん、びじん、、ああ、び^^じん、びじん。こころがきれいがほんまのびじん。」と一節うなる。弟子はすかさず合いの手を入れる。

読経の最中の腹芸バカな隣の若者は突然何を思ったか、お茶の時間に腹を出し、う~~んと力を入れて無い腹筋を浮き立たせようとした。
余興に腹芸披露というわけだ。
彼は6年ダラムサラのチェチョリンというゲルク派の僧院で学んだ後、最近村に帰り、後は嫁を探すだけの身だそうです。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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