チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年6月26日

ランタン・トレッキング第三日目

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6月10日:
この日の行程はたったの数時間。
ランタン村3330mからランタン谷最奥の村キャンジン(キャンチェン)3730mまで気持ちの良い、お花畑をゆっくり登って行くだけです。

ランタン村から見上げるランタン・リルン峰前の日の午後には雲が掛かり全く見えなかったランタン峰が朝日に輝いていました。
ランタン村からはほぼ真上に見上げる角度です。
この村にのしかかるランタン氷河は時に崩壊して下の村に被害を及ぼすことがあるという。
そんな時は、誰かがこの谷を汚したのでランタンの神ゲニェンレールの怒りが現れたのだ、ということになるそうで、このとき生贄になるのは大方その時期に不倫を行った女性側だという。
生贄といってもちろん殺すわけでなく、様々な制裁を受けるのです。
村ではこの種の秘密は通らないようです。
詳しくは風本へ。

ランタン村の朝この辺の村では朝早く、女性たちが金属製の手持ち火鉢の上にシュクパ(ヒマラヤ這松?)の枝を重ね、これを燻し、供養の香にして、家の外と中を清めて巡る習慣がある。
家畜の周りにも置かれる。

お経を唱えているときも度々このお香の清め式が行われる。
その係りの若ぞうが私の近くに来た時、「お前がさっき、大きなおならしたから、こうして香を焚かなくっちゃいけなくなったじゃないか!」という。

ランタン村で話は前後するが、ラマ・ホテルに泊まった夕方、囲炉裏端で若い旦那と話をしていると、この男が以外な過去を持ってることが判明した。
名はガワン・シェラップで数年前までダラムサラのチェチョリン僧院で僧侶をしてたとのこと。特別なのは、1998年デリーで焼身自殺した、あの伝説のパオ(勇者)トゥプテン・ゴドゥップ氏と同じ死のハンストグループにいたということです。
実際、燃え上がる炎の中で叫びながら走った彼を目の前で見たそうです。
彼は多量のガソリンを身体にかけただけでなく飲んでもいたという。だから叫ぶたびに炎が口から噴き出したという。

イエロー・ポピー私は彼に「あなたは亡命チベット人でもなく、ネパールの田舎から出てきたチベット人だが、そんなあなたがどうして死のハンストまでしようと思ったのか?」と聞いた。
彼は「同じチベット人として戦うべきだからだ」と答えました。

今は国に帰って来て結婚し、子供が生まれたばかりの宿のおやじです。

宿は最初に泊まったラマ・ホテルに紹介されランタンでは彼のおやじの宿に泊まり、さらにキャンジンではその又息子の宿に泊まることになりました。
もっともランタンのおやじは元村長でなかなかのたぬきだとも、その筋から聞いたりしました。

Rose macrophyllaそのランタンの宿に泊まっていた時のこと、夕食のために広い食堂に行った。
中には外人の団体さんが10人近くいた。
宿のおやじをインフォーマーに何か氷河の事などを聞いていた。
後で解ったがアメリカの何とか大学のエコ調査隊であった。大学の調査隊といえば、日本からは北海道大学の方が毎年来られて氷河などの調査をされているそうです。
それはそれはまじめで、朝沢山朝食を頂いた後は山に上がって夕方暗くなるまで何やら石を砕いたりして調査に熱中されているそうです。

Iris kemaonensisとにかく、おやじはもう話に飽きたのか、やおら私に話をふり、これ以上聞きたいことがあればこの人に聞けといって、私を強引に席に着かせた(その前に貞兼さんの知り合いだと言ったからだ。この辺では貞兼さんの知り合い=ランタン専門家というわけだ)。
何の話かな?と間に入っていたネパール人に聞くとこの人が驚いたことに日本語がべらべら、それもそのはず、彼はかの九州大学で地質工学とかを専門に学ばれた方だそうです。
今回このグループのコーディネーターをやってるのだそうです。
専門用語を良く知ってて面白かったので生徒はほったらかしで彼と日本語で氷河の話などしていました。

Primula sikkimensisこの谷はカトマンドゥからアクセスが容易だし、比較的低いとこまでいろんな氷河が下りてきてるので、調査し易いのでしょう、世界中から調査隊が来ているそうです。

ついでながら、ギャンジンにはこれから雨季に入ると「ブルー・ポピー」を見るためのツアーに参加した日本人グループが大勢いらっしゃるそうです。
中には高い金出してヘリで飛んでくるグループもあるとか。
ちなみにここまでのヘリコプター代は5人乗りチャーターで片道US$2000だそうです。
往復8万円ぐらいでしょう。お年寄り、お金持ちの方にはお勧めです。
宿によれば、ここから丘に登って見に行くのはきつい、という方のために、宿の近くまで「ブルー・ポピーを持って来てくれるサービス」をしてくれるところもあるそうです。

Rhododendron setosum現地の人に言わせれば、一般に日本人はブルーポピー、外人は登山に興味があるそうです。

お金の話が出たついでに、、、例えば普通にここまで、バスと歩きで来れば幾らぐらいかかるかについてだが、
カトマンドゥからシャプルベシまでのバス代が220ルピー(1ルピー=1.2円)
一日の宿の部屋代が150~200ルピーと安い、しかし食事代はダルバート(ネパール定食)が250~300ルピーとべらぼうに高い(平地で50ルピー)、その他チャイが50ルピーとかで飲食費は一日4~500ルピーかかる。
食費と宿代に毎日700ルピー前後払った。
どうして部屋代が安くて、食費が高いかについては後で詳しく述べる。

とげの多いどこにでもある灌木だが名前は不明昼飯にプラス300使ったとして一日に1000ルピーの出費=1200円ほどだ。
この上にもしも私のように生意気にポーターを雇おうという人はプラス一日700ルピー(食事無、値切れば少し下がる)。
一日中自分の荷物を持ってもらって1000円は本当に安すぎると思う、、人は後でチップを弾めばいい。
話相手になってポーターもいいものです。
この辺は高度も高くなく、クンブに比べポーターは比較的楽です。このあたりの荷物上げのポーターは一人50キロしか持ちません。クンブでは100キロ平均だったので自分は持てないのに、軽いなあ、、と見送ったりします。

貞兼さんの話ですが、ランタン村をはじめこの谷で<SADAKANE>の名前を聞いて「おお!」と声を上げない人はいないということに気付きました。
もちろん、いい意味の歓声です。
何よりもこのランタン村に電気を引いた人ということで有名のようでした。

そのほか、貞兼さんは様々な良い活動を数十年前からこの谷を中心に行って来られているのです。

Pplygonatum hookeriランタン谷は貞兼さんの愛により祝福された、日本人には特にみんなが親切にしてくれるという、誠に旅行し易い土地柄を備えているのというわけです。(くれぐれも悪用しないように)

写真は花が多くなってきました。花と山はこれから先が本番です。
花の名前を調べるためにカトマンドゥで帰りがけに二冊のヒマラヤの花の本を買って帰りました。

一冊はOxford University Press

もう一冊は

日本人のToshio Yoshida さんという方が英語版で出されている写真本です。
Yoshidaさんの本は美しいが108種類しか載ってない。
Oxfordの方は1472種類載っているが,印刷がインドなので写真が小さく不明瞭で時に判別が難しい。
とにかくこの二冊をたよりに学名とか知ったかぶりして書いているというわけです。

Meconopsis paniculata例えばヒマラヤのブルー・ポピーは有名ですが、同じブルーにも何種類もあり、この所謂Meconopsis属(?)に属するヒマラヤの野生ポピーは二冊の本に合わせて14種類の写真が載っています。
色もブルー、イエロー、クリーム、ピンク、赤と様々です。
今回はMeconopsis peniculataという黄色いポピーしか見かけませんでしたが、かつてインドのラホールの山でブルーを見たことがありました。
初めて見たときはやはり感動するものです。

Potentilla cuneata

名称不明のラン

Rheum australe

余程珍しい種類なのか?図鑑に見当たらず。

キャンジン・ゴンパ

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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