チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年5月21日

亡命に失敗した尼僧の証言

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チベット プランの町写真はカイラス山の南、ネパールに抜ける国境の町プランです。

今日はRFAから泣きながら話す女性の声が聞こえてきました。
ただ、カム訛りが強くてその時は良く話は解りませんでした。
カム語に強いチベット人に助けてもらい、やっと理解できました。

ーーー

その38歳の彼女は1998年に一度インドに亡命し、ダラムサラの難民成人用の学校ソガ・ロプタに通っていましたが、途中尼僧になることを決心し尼になり、ダラムサラの山に入り修行生活をしていた。
しかし2005年5月、チベットに残した年老いた両親が病気になったと伝え聞き、両親に会うためにチベットに再び帰った。
郷里で3か月を過ごし、母親の病気も少し良くなったので再びインドに帰ることにした。
もう一人の女性と二人の子供と共に国境に向かった。その二人の子供は11歳の男の子と13歳の女の子で、両親とも死んでしまったのでインドに送られることになったのだ。

以下彼女の話:
カンリンポチェ(カイラス山)の南、国境を前にしたプランで国境警備隊に見つかってしまった。
プランでは5日間毎日一人づつ暗い部屋に連れて行かれ尋問され、殴られた。
最初に警官は私が頭を剃っているのに気づき、「お前は尼か?ダライの犬だな!ダライの使い走りの犬だろう」と言って殴りつけた。
私は、それがチベット人だったので、ショックだった。
同じチベット人が「ダライ」とかいうことが信じられなかった。
本当に悲しくなった。

「子どもまでインドに連れて行ってダライの犬にしようとしているんだな」とも言った。
毎日同じようなことを聞き、答えが気に食わないと殴られた。
何度殴られたかわからないほど沢山殴られた。
私はまだしも幼い子供たちまでもむちゃくちゃに殴られていて可哀そうだった。

5日経つと車に乗せられ、ガリ(アリ)の拘置所に連れて行かれた。
そこで、最初の8日間手錠、足錠をはめられ、真っ暗な棺桶のような独房に入れられた。
そこはほんとうに真っ暗で狭い。
頭を上げれば天井に衝く、足を延ばせば壁にあたる。
人一人横になるほどの広さしか無かった。
そこに入れられたまま、8日間全く一滴の水も与えられなかった。
私は死ぬと思った。

8日後にいきなり外に出された。
外はあまりに眩しくて、すぐに眩暈がして倒れた。
気がついた後に食事と水が与えられたが、全く食べることができなかった。

その後一年間そこで強制労働させられた。
その間、ある夜、二人の中国人看守がやって来て、私に薬を飲めという。
私が嫌がっていると、二人で無理やり私の口に薬を押しこみ水を飲ませた。
その後、すぐに二人が服を脱ぎ始めたが、私は薬のせいで身体が動かず、二人に侵されてしまった。
これで尼僧ではなくなってしまった。
一年後、胸を病んで仕事もできなくなったと言うことで外に出された。
そのまま、ガリ地区で2年間病気の治療をしていた。

今回助けてくれる人がいて国境を無事越えることができた。
ネパールの収容所に辿り着いた時には本当に心から嬉しかった。
これでやっとあの地獄から逃れることができた、と思い安堵した。
酷い思い出したくないことばかりだった。

ーーーーーーーーーーーーーー

以上はRFAが5月19日にダラムサラの難民収容所でインタビューしたものです。
彼女は途中何回も声が震え明らかに泣きながら話していました。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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