チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年5月19日
ラプランからの5人の勇者
今日5月19日午前11時より、ダラムサラの亡命政府情報国際関係省内のホールで、
先頃亡命に成功しダラムサラに到着した5人のラプラン僧院の勇者を迎え、記者会見が行われました。
実はこの会見は先日も行われたのですが、このときは英語の通訳がいなくて外人はおろかチベット人メディアも彼らの言葉を理解しかねたらしく、二度目の英語通訳付きの会見が開かれたというわけです。
実は私はちゃんと一回目の時には「どうせ行ってもアバ語は理解不可能であろう」と思い行かなかったのです(たださぼっただけ)。
一年間、山から山へと逃亡生活を送った彼らは、顔は日焼けし、野人化して身体は強そうでした。
5人の内2人は2008年3月14日の大デモを先導した僧であり、3人は4月8日外人記者団の前で訴えた僧たちです。(全員長髪、普段着と化しています)
写真左端からジャミヤン・ジンパ24歳、ゲドゥン・ギャツォ37歳、ケルサン・ジンパ39歳、ロプサン・ギャツォ24歳、ジグメ・ギャツォ22歳。
彼らは一様に行動の動機は「中国が嘘ばかり言っていることに我慢できず、真実を世界に訴えたかったからだ」と言っていました。
また、「とにかく記者の人たちはチベットに実際行って、それも少なくとも一か月ほどはいて、ちゃんと人権状況を調査してほしい」と何人かが訴えていました。
「3月のデモで逮捕された者たちが大勢拷問を受け、中には障害者になった者もいる、軍隊が僧院に押し掛け、お堂のドアを壊し中から金目の物をそっくり盗み出したり、各僧房へも法王の写真を探し出すと言って荒らし、同じく金目の物を取っていったという。
僧を集め、法王の写真に火を点けるよう強制したこともある」
「去年から逮捕を恐れて山に逃げ隠れているチベット人は、チベット中至る所に今もたくさんいるはずだ」と話していました。
会見が終わりお茶の時間になったとき私も彼ら勇者(ここでは彼らはパオ「勇者」と呼ばれています)一人一人と握手。
「中国人じゃない日本人だ。中国の敵でチベットの見方だ。心配ない、日本が助けるから近いうちチベットは自由になる!」と勝手なことを言って悲しい笑いを取っておきました。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)