チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年5月4日
5月3日ニューヨークでの法王のお言葉
法王はボストンからニューヨークに場所を移され、朝から精力的に講演を行っておられます。
東京とか一か所で一回だけというのとはどうも密度が違うようです。
今のところ、二か所でのレポート3つがphayulに上がっていますが、その中から適当に法王の御言葉のみを拾って紹介いたします。
コンテキスト抜きですからその点ご注意を。
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昨日5月3日、NYマンハッタンのタウンホールでチベット・ファンド主催のパネル・ディスカッションが行われました。
<「我々」とか「彼ら」という概念はもう古い:ダライ・ラマ法王>
パネラーは法王と元アイルランド大統領であり元国連人権高等弁務官でもあるマリー・ロビンソン女史でした。
法王:現実を変えるためには、まず考え方を変えなければいけない。
人間の同一性の認識が大事だ。
今日、世界の現実は益々相互依存状態の中にある。
「我々」とか「彼ら」という概念はすでに存在しない。
全世界が我々の一部なのだ。
我々にはグローバルな責任感が必要なのだ。
世界は依然、個人の利害は他から独立してあるという古い、時代遅れの概念を引きずっている。
現実とはかけ離れているにもかかわらずだ。
例えばアメリカは最大の国家でありもっとも強大な経済力を持っている。
しかし、その将来は他の世界の国々に依ってあるのだ。
これが現実だ。だから他を自分の一部として扱うべきなのだ。
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同じイベントのレポートのようですが、次はロイター通信の記事から。
<ダライ・ラマはNYでアメリカ人にチベットに行くようにと勧めた>
http://phayul.com/news/article.aspx?id=24611&article=Dalai+Lama+in+NY+urges+Americans+to+visit+Tibet
中国はチベットの人々は幸せに暮らしているというが、本当にそうなのか?アメリカの人たちに実際にチベット本土に調べに行ってほしい。
中国政府は決してそこに問題があるということを許し、認識しようとしない。
こうなると、そこに問題があることを示すのは世界の責任だと思う。
もしも、大多数のチベット人が幸せであるならば、我々の情報が間違っていたことになり、我々は中国政府に謝罪しなければならない。ハハハ、、、
チベットの植民地支配者ではなく、チベットの解放者であるという特徴は何もない。
解放者が禍をもたらすはずもない。
だから、あなた方、チベット人以外の人たちはチベットに行ってほしい。
そして現実を世界に知らせてほしい。
お願いする。どうか行って見てきてほしい。
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午後にはマジソン・スクウェア・ガーデンのワム劇場で、NYとNJに住むチベット人主催の講演会で話されました。
<弾圧すればするほど反抗も増える:ダライ・ラマ法王>
法王はこの機会を使って内地にいるチベット人たちに話掛けられた。
法王:どうか、(中にいるチベット人たちは)このような厳しい状況の中でも決して暗くならないように。
怖れたり、卑屈になるべきではない。
中国政府によるチベットの弾圧は去年からより激しくなっており、このような雰囲気、状況の中でたくさんのチベット人たちが鬱になり、中には自殺する者も現れている。
チベットの現在の状況は生死に関わるものだ。
中国の政策はチベットのアイデンティティーと文化を消し去ろうとするものだ。
しかし、真実は決して消え去り得ない。
最近の亡命者と話をしてみて思うことは、中国が弾圧を強めれば強める程に、チベット人の抵抗精神は強くなってきているということだ。
しかし、チベット人は決して非暴力の道を諦めてはいけない。
真理は遍く広まる(勝利する)からだ。
仏教はチベット人の文化と生活習慣のバックボーンだ。
しかし、もしもその価値を基礎にした努力がなされないならば、仏教も衰退する可能性がある。
チベット人を含め、多くの人々が<大衆仏教popular Buddhism>に魅了されている。
例えば、正しい哲学的理解無しに、数珠を持ち歩き、高価な仏像、菩薩像を見せびらかしたりすることだ。
数珠はお金を数えるには便利だ、、ヒヒヒヒヒ、、、、
真の仏教の行とは心を変換することだ。
一方、大衆仏教は<安物で良くないものcheap and not good>だ。
心の批判的機能を使って、初めて真の正しい行が実現されるのだ。
(チベット人は)其々の家庭の中で仏教に関する論議を行うように。
自分の子供たちにチベット語で話しかけるように。
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少し古い話ですが。
4月の終り頃にアップリングで行われた
モーリー・ロバートソンさんと福島香織さんの対談の内容がなぜかサーチナに載っていました。
私が東京に居れば必ず行ってた対談会です。
三部物です。
体制側役に回された福島さんの言葉が面白いです。
ロバートソンさんは素晴らしい突っ込みを入れられます。
対談:報道規制・操作が続くチベットの現状
Searchina 2009年4月28日
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0428&f=entertainment_0428_012.shtml
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0428&f=entertainment_0428_018.shtml
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0428&f=entertainment_0428_024.shtml
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)