チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年5月4日

5月2日ボストン、ギレット・スタジアムでの法王講演レポート

Pocket

5月2日、ボストン郊外、ギレット・スタジアムで行われた法王の講義の内容がTibet.netに少しレポートされていたので、その中からさらに抜粋で以下紹介いたします。

http://www.tibet.net/en/index.php?id=893&articletype=flash&rmenuid=morenews

2.5.09 bostom法王:全ての宗教は以下の三つの質問に関する三つのポイントについて語る。
1、私或いは我(自己)とは何か?what is I or self?
2、我に始まりは有るのか?Does the self have a beginning?
3、我に終わりは有るのか?Does the self have an end?

有神論、無神論に関わらず全ての宗教はこの三つの質問に何らかの答えを持っている。

有神論的宗教は何らかの形の我(の存在)を信じている。
一方、仏教のような無神論的宗教は独立した我の存在を信じない

二番目の我に始まりはあるのか?の質問に対しては有神論的宗教においては、神がすべてを創造したのだから、それは有るという。
この信の力は強い。
この考えによって人は神に近づけられるからだ。
この場合の神とは永遠の愛だ。
この永遠の愛に関係する何かに近づくという感覚によって、人はその肯定的気質を増進しようとの意欲を持つ。

無神論的宗教においては、因果律を信じるが故に、全ての現象は原因と条件によって生起する。だから、彼らは始まりを持つ我を信じない。

我に終わりがあるのか?については、有神論的宗教は、終わりは有るという。
無神論的宗教である仏教の場合には、この点に関しては幾つかの違った意見がある。
ある学派の見解によれば最終的な涅槃に至ったとき我・意識は完全に終わるとする。
他の派は、我に終わりは無いという。

ーーー

2.5.09 bostom 2法王:四諦(四つの真理、苦・集・滅・道)は二つに分けられる。
苦しみと喜びだ。

最初の二つ、苦と集(苦しみの原因)が苦しみであり、後の二つ滅と道が喜びだ。

苦しみには四つの特徴がある。
無常、求不得、空、そして無我だ。
その苦しみの原因は現象の真実のあり様に対する無知(無明)であると知り、この無明を晴らす智慧を育てることによって、人は苦しみを終わらせる(滅する)ことができるのだ。

法王は午前中の講義の終わりに聴衆に「菩薩戒」を授けられた。

午後の部「幸福と内なる平安への道」と題された講義において法王は、
人間性の同一性を強調されることから始められた。
法王:イデオロジー、肌の色、国籍、等々の違いは二次的なものだ。

誰しも暖かい心を称賛する。友情もこの暖かい心から生まれる。
問題はこの心は果たして、機械が作りだしたり、注射や薬で治ったり、どこかから買って来ることができるものであろうか?ということだ。答えは否だ。

心の平安を得る一つの方法はできる限り他の者たちのために働くことだ。それができなくても少なくとも他を害さないことだ。

ーーー

質問:悲劇や問題にどうやって対処すべきか?

法王:心を大きくし、広い視野で見ることだ。近くで見ていると堪え難いものもより広い視点からみると、眺めは違って見えて来るものだ。

質問:こちらが助けようとしても相手が否定的な反応をするときにはどうしたらよいのか?
法王:慈悲には二つのレベルがある。生物学的レベル(普通の)の慈悲は偏りがあり限界がある。一方訓練(修行)によって育成された慈悲には偏りがなく限りもない。

質問:チベットを助けるにはどうしたらよいのか?
法王:(質問者にジェスチャーで礼を言われ)私はチベットを支援して下さっている人たちの事を必ずしもチベット派pro-Tibetではなく、正義派pro-justiceだと思っている。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

ちべろぐ

Archives

  • 2018年3月 (3)
  • 2017年12月 (2)
  • 2017年11月 (1)
  • 2017年7月 (2)
  • 2017年5月 (4)
  • 2017年4月 (1)
  • 2017年3月 (1)
  • 2016年12月 (2)
  • 2016年7月 (1)
  • 2016年6月 (1)
  • 2016年5月 (9)
  • 2016年3月 (1)
  • 2015年11月 (1)
  • 2015年10月 (2)
  • 2015年9月 (4)
  • 2015年8月 (2)
  • 2015年7月 (14)
  • 2015年6月 (2)
  • 2015年5月 (4)
  • 2015年4月 (5)
  • 2015年3月 (5)
  • 2015年2月 (2)
  • 2015年1月 (2)
  • 2014年12月 (12)
  • 2014年11月 (5)
  • 2014年10月 (10)
  • 2014年9月 (10)
  • 2014年8月 (3)
  • 2014年7月 (9)
  • 2014年6月 (11)
  • 2014年5月 (7)
  • 2014年4月 (21)
  • 2014年3月 (21)
  • 2014年2月 (18)
  • 2014年1月 (18)
  • 2013年12月 (20)
  • 2013年11月 (18)
  • 2013年10月 (26)
  • 2013年9月 (20)
  • 2013年8月 (17)
  • 2013年7月 (29)
  • 2013年6月 (29)
  • 2013年5月 (29)
  • 2013年4月 (29)
  • 2013年3月 (33)
  • 2013年2月 (30)
  • 2013年1月 (28)
  • 2012年12月 (37)
  • 2012年11月 (48)
  • 2012年10月 (32)
  • 2012年9月 (30)
  • 2012年8月 (38)
  • 2012年7月 (26)
  • 2012年6月 (27)
  • 2012年5月 (18)
  • 2012年4月 (28)
  • 2012年3月 (40)
  • 2012年2月 (35)
  • 2012年1月 (34)
  • 2011年12月 (24)
  • 2011年11月 (34)
  • 2011年10月 (32)
  • 2011年9月 (30)
  • 2011年8月 (31)
  • 2011年7月 (22)
  • 2011年6月 (28)
  • 2011年5月 (30)
  • 2011年4月 (27)
  • 2011年3月 (31)
  • 2011年2月 (29)
  • 2011年1月 (27)
  • 2010年12月 (26)
  • 2010年11月 (22)
  • 2010年10月 (37)
  • 2010年9月 (21)
  • 2010年8月 (23)
  • 2010年7月 (27)
  • 2010年6月 (24)
  • 2010年5月 (44)
  • 2010年4月 (34)
  • 2010年3月 (25)
  • 2010年2月 (5)
  • 2010年1月 (20)
  • 2009年12月 (25)
  • 2009年11月 (23)
  • 2009年10月 (35)
  • 2009年9月 (32)
  • 2009年8月 (26)
  • 2009年7月 (26)
  • 2009年6月 (19)
  • 2009年5月 (54)
  • 2009年4月 (52)
  • 2009年3月 (42)
  • 2009年2月 (14)
  • 2009年1月 (26)
  • 2008年12月 (33)
  • 2008年11月 (31)
  • 2008年10月 (25)
  • 2008年9月 (24)
  • 2008年8月 (24)
  • 2008年7月 (36)
  • 2008年6月 (59)
  • 2008年5月 (77)
  • 2008年4月 (59)
  • 2008年3月 (12)