チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年4月13日
法王の昨日のお話/TCVの生徒たちが中国大使館前で裸の抗議
昨日、4月12日ダラムサラ郊外ノルブリンカの近くに、新しく大きな僧院が完成しました。
昨日はその開山式が行われ、ダライ・ラマ法王始め、ギャワ・カルマパ、政府高官、台湾中心の施主その他大勢の外人、チベット人が集まりました。
この僧院は通称カムトゥル・リンポチェ(本名カゴゥー・トゥルク・ジャミヤン・ドゥンドゥップ・リンポチェ)という、ニンマ派の大御所が建てられた僧院です。
チミ・ガツェル・リン(不死喜楽園?)と名付けられました。
私が最初にノルブリンカの設計を頼まれたのもこのリンポチェからでした。
そのころリンポチェは亡命政府の宗教・文化大臣でした。
あまりに人柄が良く、笑顔も良いので、つい仕事を受けてしまいました。
20年ほど昔、個人的にニンマの「チュー」の行とか教わったことがありました。
まだ、そのころリンポチェは小さな家に住んでおられました。
もう90歳は超えておられると思いますが、、、今だお元気です。
昨日は分かってはいたのですが、取材?野次馬しに行きませんでした。
でも、今日ちゃんとRFAで一番聞きたかった法王のお話の一部が流されました。
以下、その一部を翻訳紹介します。
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法王:
仏教はどこにあると言って、指差すべきは自分の心しかない。
自分で勉強して、要約すれば、シ・ラム・デ・スン(四諦を基礎とし,智慧と方便の道を通り,果としての二身(化身、法身)を得るという教え)である、顕教の経と論書を学び、「経に通じた」という資質を得ることが一つ。
一方、仏が弟子に教えを説いたのは弟子たちを仏と同じ境地に導くためだったの
だから、学んだことを実践して各自の心に体験を得、心を制御することを得なければならない、ということが二つ目。
経律論に纏められた戒定慧の教えを学びこれを心に留めておかないといけない。
このようにして経の知識と体験を備えた者たちが、1人から10人、10人から100人、100人から1000人と増えて行くならば、初めて仏教が広まったと言うことができるのだ。
そのような経に通じていないならば、外にいくらかっこよく豪勢に繕っても、それで仏教が広まったということは難しいであろう。
先ほどのリンポチェの話によれば、この僧院においては将来的に多くの顕教の経も学ばれるようなので、これは非常に良いことだ。
また、ロンチェン・ニンティを学ぶものは多いいが、ロンチェン・ズドゥンを学ぶものは少ない。ここではこれが学べるとすれば特別よいことである
中略、
テンギュール(経蔵)の中にある中観と論理学を学ぶことは今の時代に特に大事だ、
チベットに仏教を伝えたのは一般に、ケン・ロップ・チュ・スン(シャーンタラクシタ、バドマサンヴァバ、ティソンデツェン)と言われるが、特にシャーンタラクシタ(寂護725~788年)の著された中観荘厳論、ツェツェン(真実成就?)、真理綱要なども勉強することができれば、他と違う特別の意味を持つ僧院になることができるのではないかと思う。
中略、
ヴァスバンドゥ(世親400~480年)が「仏の教えは二つ、経と行の教え。真実を分析することと瞑想すること、これのみだ」とおっしゃるようにまさに「これのみ」と知るべきだ。
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法王は新しい大きな寺の開山式とかに呼ばれると、だいたい以上のような趣旨のお話をされるようです。
常に寺を建てることに熱心にならずに、勉強に熱心になるようにと言われるのです。
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台湾の施主達に向かって感謝の意を伝えられた後:
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法王:
仏教は慈悲を根本とする。
智慧に裏打ちされた慈悲の行を説く。
だから、あなた達もできる限り、愛と慈悲を実践し、特に「縁起=空」を理解した上でこれを実践するなら、本当の仏の弟子といえよう。
私はいつも言ってるが、仏教は単に「信」じることではない、智慧と共にある「信」が要るのだ。
そのような「信」は「不退転の信」となる。
「知」って「信」を起こすべきだ。
だから勉強が大事だ。皆さんも機会があれば、寄付してくれるだけでなく、積極的に経典の講義を受けられるとよいと思う。
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今日のPhayul.comによれば、
http://phayul.com/news/article.aspx?id=24442&article=School+children+protest+naked+at+Chinese+embassy
<ニューデリーの中国大使館前で高校生が裸で抗議>
今日4月13日、TCVなどの卒業試験を終えたばかりの高校生10人がチベットの中で続く弾圧に抗議して、厳戒下の中国大使館前で裸になり、手にチェーンを巻いた姿で「チベットに自由を!」「チベットに人権を!」とスローガンを叫びながら、
鉄条網に飛び込んだという。
TCVバイラコクピー校のドルジェ・ツェテンは
「この抗議は、中国の指導者たちに彼らのチベット人に対する弾圧政策は、彼らがいくら世界の目からチベットにいるチベット人の現状を隠そうとしても、それは<裸の真実>である、と言うことを示すためのものだ」と語った。
中略
同じ学校のツェリンは
「私の両親は昨年の平和デモに参加し逮捕され、今刑務所にいる。
自分は今、両親の状態を知る手がかりが全くない。
私が今日ここに来たのは、中国政府に対し、私の両親をはじめとする、チベットへの思いとダライ・ラマ法王への帰依を表明しただけで獄に繋がれている、無実のすべてのチベット人を解放することを要求するためだ」と語った。
ロトゥは
「私が故郷のチベットを離れたのは、そこには教育を受ける権利も、言論、宗教、移動の自由もないからだった。
毎年1000人ものチベットの子供たちが中国の圧政を逃れるために、私のようにヒマラヤを越えてくる。
チベットの親たちがもう子供たちと別れ離れにならなくてもいいように、弾圧は終わらせるべきだ」と語った。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)