チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年4月5日
今日の法王
今日は朝9時半から二時間弱の間、ダラムサラのツクラカン・カーラチャクラ堂にダライ・ラマ法王もお出ましになり、あるコンフェランスが行われました。
会議(と言っても檀上の出席者が順番にスピーチをして、最後に法王が締めるという形式)の名称は「第二回・The Indian View for Global Peace(世界平和に向けてのインド的視点)」。
今回のテーマは「Reciprocity: Base for Universal Interconnectedness 相互依存状態・関係(縁起):普遍的繋がりの基礎」。
他にパネラーとしてインドの精神界を代表する?グルジ、スワミが4人、チベット仏教からギャワ・カルマパとラマ・チュペル・ゾパそれに何と一人日本からもエントリーされておられました。
日本の精神界を代表する人は内田大円僧正でして、浄土真宗大光寺の方で、
「糖尿病を治す奇跡の<アーユルヴェーダ>」とか「<チベット医療>で糖尿病は完治する」とかの本を書かれており、<インド文化協会>の会長さんでもあります。
何でも、古くからのペマ・ギャルポさんのお友達とのことです。
それはさておき、会場で配られたインドの新聞に掲載されていた、法王のこの会議への二つのメッセージをまず紹介します。
「世界平和を実現するためには、まず内なる平和を実現せねばならない。
もしも、自分自身に対して平和であるならば、他の人々にも心を開くであろう。
これこそが、普遍的平和の基礎である」
「我々は今、新しい時代(ニュー・エイジ)の暁を経験している。我々はドグマ(教理、教条)に代わって普遍的な人間性・精神性の価値を(基準に)据えるべきだ。
そして、これらの普遍的価値を、今生まれつつあるグローバル家族同士を結び合わせる繊維としなければならない」
会議はまず、主催者のインド人実業家が挨拶したあと、3人のインドのグルジ(尊師)(ヒンドゥー教シバ派、ビシュヌ派それにジャイナ教)がヒンディー語で演説し、法王が英語で話され終わりとなりました。
カルマパのスピーチを期待していたのですが、ありませんでした。
日本の方は檀上にも上がられず、スピーチもありませんでした。
以下、法王の今日のお話の中から少しだけ紹介させて頂きます。
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「チベットには雪(仏性、智慧、慈悲の心?)はたくさん昔からあったが、インドからの光(仏教)を得て初めて大地(心、文化?)を豊穣にすることができたのだ」
「考えてみれば、ブッダ・シャカムニはインドの人だし、シバ神はカイラス山を常住のお住まいとされるということはシバ神はチベットの人だ。
昔から関係が深いということだ、ヒヒヒヒヒ、、、 だから、インドの人はとても寒いカイラスに毎年巡礼に行かれたりしてる」
「非暴力と平和は少し違う、平和は戦争に対峙するもので、戦争により獲得されるものであったりする。手段が非暴力とは限らない。一方非暴力は慈悲と尊敬の心を動機としたもっと強いものだ。」
「先ほども、私にインド人になったらどうか、そうなるべきだという話が出ていたが、もしもインドが私のようなチベっと人の弟子に代わって、グル(師)として世界にこの非暴力の教えを積極的に広めてくれるようになったら、私もインド人になることを考えよう」
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それにしても、こうしてインドの有名なグルジ、スワミと一緒に法王やカルマパの姿を眺めていると、衣装が揃ってアルカイックだし、今が2000年前でもおかしくないような気がしてきました。
2000年前に同じような黄色い布だけを身体に巻いた精神界のグルジたちが同じような議題で集会を開いたりしたかもしれない!?
何てとんでもないことを考えたりしました。
インドの一つの伝統を感じました。
みんな揃って話は抜群にうまいです。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)