チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年3月27日
ラギャ続報/ カンゼの女性証言談2
先に紹介したラギャのシンシャ・リンポチェの下に入った情報をVOT(Voice of Tibet)経由でphayulが伝えたところによると。
http://phayul.com/news/article.aspx?id=24291&article=Family+of+monk+who+commited+suicide+offered+monetary+compensation
「自殺したタシ・サンポの家族に対し、20万元(約290万円)の賠償金が中国政府から支払われることになった」という。
これが本当だとすると、前代見聞の話です。
第一警察は、「タシは逃げようとして川を泳いで渡っていた」と主張し、証人もいると言っていた。
それを、今度は賠償金を出すとは?
最低タシが死亡したことは認めたことになる。
「自殺」を認めたのかどうかはわからない?
それにしても何に対する賠償なのであろうか?
「タシを自殺に追いやった責任を認めて」だとしたら!政策の大変更でもあったのでしょうか?
それにしても破格に多い額です。
ブロパガンダ用でしょうか?
金で解決しようと言うわけでしょうか?
裁判?もなく。
ところで、タシは孤児で84歳の祖母と5人の兄弟によって育てられたという。
他の情報として、「タシの僧衣が川岸で発見された」。
先に「タシが川を泳ぐところを見たと証言した、女性が警察に身柄を拘束されている」という情報があります。
何のためにその女性を拘束するのでしょうか?
良く分からないことばかりです。
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以下、前回報告した
<カンゼ・強制避妊手術を受けた女性の話>の続きです。
チミ・ラモには4人の子供がいます。
現在長女20歳、長男17歳、二女14歳、三女10歳です。
下の二人は所謂「黒子」であり戸籍がないので、学校にも入れないし、仕事につくのも大変です。
長女はラサの私立の学校に送っています。
この方が余程安く済むのです。月謝は50元です。
長男は男の子と言うことで無理をして、地元の公立の学校に2年間だけ通わせたそうです。
しかし、この学校の月謝は300元もしたので長くは続けさせられなかった。
下の子供に教育を与える機会は皆無だ。
自分の健康と子供の教育の事を思い、中国の下に暮らす苦しみから逃れたいと、
彼女は2002年亡命を決心します。
国境のダムまで車で行き国境を越えようとしましたが、中国兵に見つかりそうになりました。
子供二人を連れに託して先に逃がした後、自分はみんなの身代りのようにして逮捕されました。
尋問中に運悪く偶然持っていたTCVのパンフレットが見つかったのです。
中には法王の写真もある、ダラムサラの連絡先もある、、、ということで彼女はすっかりスパイということにされたのです。
拷問もありました。
結局3年の刑を言い渡されました。
本当に辛い日々だったそうです。
そして刑期を終え故郷に帰ってみると、旦那は消えていました。
近所の者から、ラサにいると聞きました。
ラサまで旦那を探しに行ったのですが、教えられた住所を尋ねるとそこには幼子を抱え、さらに妊娠している女性がいました。
旦那の新しい女でした。
再び心打ちのめされ、2006年2度目の越境を試みます。
今回は成功しました。
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腹痛が治まらないのでダラムサラの病院で診察したところ、中に入っている避妊器具を取り出さないと危険だ、と言われたそうです。
しかし、彼女は嘗ての避妊手術がトラウマになっていてどうしても再び手術をする気になれないで、今もそのままにしているそうです。
チベットの女性は中国の圧政下、二重三重の苦しみを背負うのです。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)