チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2009年3月24日

カンゼの耕作放棄運動

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f3c524e8.JPGこのところ、カム、カンゼで行われている、「耕作ボイコット・キャンペーン(放棄運動)」
のニュースがTCHRDを中心に度々報道されています。

http://www.tchrd.org/press/2009/pr20090321.html
http://www.tchrd.org/press/2009/pr20090323.html
http://www.tibet.net/en/index.php?id=762&articletype=flash&rmenuid=morenews
http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=24267

TCHRDによれば、カンゼ地区では今年3月以降、すでに少なくとも28件の抗議デモが行われ、60人以上のチベット人が逮捕されているという。

このようなデモに農家の若者が参加するこのも多いといいます。
そして逮捕される。
中には働き手を完全に失った農家もある。
そのような農家は実際畑を耕作することができない。

その他、後にお知らせする無謀なチベット農民圧迫政策に対する反感もあり、地区の農民たちは団結して、「耕作放棄運動」を始めたのだ。
これはしかし、自分たちの食糧の無くなるという結果になり、その意味では自殺行為でもある。
これに対し、当局は会議を開きその結果「耕作を拒否する者は誰であれ、逮捕され、その土地は政府に没収されるであろう」という結論に達したとか。

そして、実際まず17日に一人の農民僧侶が逮捕され、23日には3人の農民が逮捕された。

「耕作を止めると逮捕される」という国は世界中に他にあるのでしょうか?
文革時代には確かにこんな法律(条例)もあったでしょう。
(実に野蛮で遅れた国です)

このことに関連して、偶然昨日別件でインタビューしたカンゼ出身の御夫婦からこの地区の農民政策について聞きました。

旦那さんは、実は2006年9月に「ナンパ・ラ(峠)で中国の国境警備隊に一人の尼僧が射殺された」事件の目撃者の一人なのです。

彼は一番先に撃たれ、二人が撃たれるところを目撃し、外人登山隊のテント・トイレに匿われ、二日氷河に隠れ、やっと夜中に一人でナンパ・ラを越えることができたのです。
彼はその時の事件を解り易い、大きな一枚の油絵にしてくれています。

この話は後に詳しくレポートするつもりですが、今は話しの中から、この農民「耕作放棄運動」に関連した部分だけ、お知らせします。

彼はカンゼの田舎で両親と奥さん二人の子供と一緒に暮らしていた。
基本的には農家であったがヤクも数十頭いて放牧も行っていた。
耕作地は昔は相当広かったという。

以下彼の話:
2002年頃から政府は耕作地の半分を買い上げると言い出した。
買い上げて植林をするというのだ。
昔あれほど森を切り倒して丸裸にしたのに今度は反対を強制する。
買い上げると言うが本当はただ同然で手放させられるのだ。

昔畑は45畝あったが、そのうちの23畝を取られた。
5年間に毎年一畝当たり100元ずつ払われる。
しかし、5年がたてばもう完全に政府の土地になる。
その土地からは、もしも普通に耕作地に使われれば一畝当たり年間7~800元の収穫が上がるのだ。
だから、ただ同然で取り上げられたのだ。

中国はいつも「如何にチベットに金を落としたか」について宣伝する。
でも、実際は何も貰っていない。
取り上げられるばかりだ、耕作地に税金を掛け、牧草地にも税金をかける。
その上ヤクなどの家畜の数を制限してくる。
まったくチベット人を餓死させるつもりなのだ。
みんな追い詰められているんだ。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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