チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年3月19日
3月10日法王記者会見 その五
法王の3月10日の記者会見レポート最終回です。
法王は英語で話されました。
尚、これは私の試訳に過ぎません。
質問者:ファイナンシャル・タイムズのものだが、
現在のチベットの状況についてコメントしてもらいたい。
去年は7000人が逮捕されながらも、抵抗は続いた。
今年も去年と同じ程度の抵抗運動が起こると思われるか?
内部のチベット人に対するメッセージはあるか?
法王:最近、困難にも拘らずチベットの内部に入り現地からのレポートを発表している外国のレポーターがいる。
それによれば、状況は極めて厳しい。
これ以上言うことはない。
それから、もう一度皆さんにはお願いしたい。
チベットの中の人々に私のメッセージを伝えてほしい。
もちろん、(現在チベット人は)厳しい状況下に置かれ、絶望的な気持になっているであろうことはよく解る。
それでも、今は静かにして、行動を抑制するようにと言いたい。
地方政府はチベット人がもっと反抗し、暴れてくれることを待っているのだ。
そうなれば、もっと簡単に打ちのめすことができるからと。
何れにしてもいいことはない、今は静かに耐えることだ。
(この私のメッセージを)何らかの方法を使って内部チベットの人々に伝えてほしい。
次、
なにBBC?、、、いや、、、違うか?
質問者:スウェーデンの新聞社の者だが、法王は「早期にチベット問題が解決されるであろうと考える理由がある、、、」と言われたが、これはどういう意味なのか?
法王:それについては、すでに答えた。もう答えた。
もう、一度説明したから、もう繰り返さない。
理由1,2,3,4と答えた。
もう答えた。
次、
質問者:フランスのテレビ局です。
あなたはステートメントの中で中国はチベットを「この世の地獄(hell on earth)にした」とおっしゃった。
この言葉は強いメッセージと感じられる。これについて更なるコメントを。
法王:これはチベット人がよく使う表現だ。
ただ、バイブルが説くところの「地獄」とは異なる。
仏教の経典には違った「地獄」についての記述がある。
ハハハハ、、私はよく知らない、、、
質問者:どういうことか?
法王:(大きなジェスチャーと大きな声で)これほどの苦しみ、これほどの恐怖、これほどの怒り、これほどの憎しみ、生活を蝕む、、、
法王の興奮を抑えようとここで、リンポチェが言葉を挟む。
リンポチェ:地獄とは苦しみの極まった(Highest Level)状態のことだ。
法王:Yes.
(ここで、少し説明がいる。この3月10日午後一時ごろにはこのステートメントに書かれた「この世の(生き)地獄」という表現が、この後中国政府からの非難を思いっきり浴び、外国メディアもこの表現を好んで使うことになろうとは、法王自身この時点で予想されていなかったご様子でした)
質問者:フランスからだが、
法王の後継者としてリン・リンポチェとカルマパのどちらが選ばれるのか?
法王:何、カルマパ? ノーノー。
ステートメントの中で今回もはっきり言っているが、私のポジションははっきりしている。
半引退だ。
最近EU議会で私はリンポチェを「私のボスだ」と言って紹介した。
政治的には彼が私のボスだ。
精神界では私が彼のボスだ。エヘヘヘヘヘヘヘ、、、、
だから今は5年ごとの選挙によって政治的トップは入れ替わる。
中国のジャーナリストも私の後継者について質問したが、
私はコミュニストではないと答えた。
もしもコミュニストだったら、自分の後継者を必ず自分でピックアップすることであろう。
でも、我々はコミュニストではない。
我々は完全に民主主義に従っている。
私はいつも「もう半引退している」と言うとき、誇りを感じる。
リンポチェはすでに二期目に入った、後、、、
リンポチェ:二年です。
法王:だから、もしも彼がそれからも同じ地位に留まりたいと考えてもそれは法律上叶わない。
この地球のメンバーである、どこかの国のある大統領などは、一生地位を守ろうとする。
そんなことはここではあり得ない。
5年ごとに選挙で選出されるのだ。
一方精神的レベルにおいては、皆様も朝の式典でご覧になったように、
私のそばにサキャ・ティチェン・リンポチェ、その傍にカルマパ・リンポチェ、ボン教のティンジン(座主)、それにデブン・キャンマ・リンポチェ、その他成就者たち、
すべての派が集っている。
黄帽派、赤帽派、黒帽派、それに何だ、、、、そうだ、ボンは時に白い帽子を被るから白帽派、
そして、、、その内、青帽派も現れてくることも期待されてるとか、、、、ハハハハハハ、、、。
緑は如何で(とリンポチェ)
そうだ、そうだ、緑は良い。
グリーン・パーティーだ!ハハハハ、、。
沢山の国でグリーン・パーティーが、、、、ニュージーランドに行った時、グリーン・パーティーの事務所に迎えられた。その時私は「もし、ニュージーランドに居るなら私はあなた方の党に入るであろう」と言った。
それは私は常に「エコロジー」の大事さを語っているからだ。
何れにせよ、すべての組織の中で若い世代の優秀な人材がたくさん育っている。
非常に健康的で可能性を秘めた指導者たちが現れてきた。
だからダライ・ラマの後継者について心配する必要はない。
ダライ・ラマ制度に関する限り、早くは1959年にすでに私はこの数百年続いた制度の存続はチベット人によって決定されるべきだと表明している。
大多数のチベット人がこの制度の存続を大事だと感じるならば、残るであろう。
もしも、大多数の人々がもう必要ないと思うなら、無くなるまでだ。
これは大事なことではない。
大事なことは前にも話したが、私の日々の生活が他の人々の福祉に何らかの貢献をするということだ。
私は自分の将来について考えたことはない。
サンキュウ、サンキュウ。
終わり。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)