チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年3月19日
抗議の焼身自殺を図った僧侶について/カンゼで尼僧一人デモその他。
昨日、N2と共にダラムサラのキルティ・ゴンパに僧ツェリンを訪ね、彼にインタビューしました。
彼はこの寺の情報収集、広報係りです。
左の写真、一枚目はもう広まっていますが二枚目は彼からもらったものです。
もっとも元は不明です。
去年3月16日、本土アバのキルティ・ゴンパで一万人規模のデモが起こり20人以上の死者が出た時、いち早くパソコンに受け取った死体写真を街に張り出し、携帯に入ってきたデモの実況生中継をツクラカン前を埋め尽くしていた群衆に聞かせたのは彼でした。
インタビューでは今までにキルティ・ゴンパをはじめとするアバ地区での出来事について知っているところをすべて話してもらいました。
ここでは最後の話として、この前の焼身自殺を図った僧侶の件について彼から聞いたところを報告します。この件に関しても彼が中心に内地からの電話やメールを受け取っています。
まず最初はこの事件についてはネパールから連絡が入ったとか。
以下この件についての彼の話。
それを受けて内地に電話した。
(最近は特によほどの要件でない限り、危険なので、こちらから電話することはないそうです)
その時は返答はなく、しばらくして複数から電話が入った。
「キルティの僧タペイが焼身自殺を図り、警官に撃たれ倒れた。すぐに連れて行かれた」というものだった。
最近中国の新華社が「成都で母親とも面会して、順調に回復している」と言ってるのは全くのウソだ。
母親は成都ではなく事件のすぐ後にちょっとだけアバで会えただけだ。
両足だけではなく両手も切断させられそうになっていると聞く。
最初から足を撃たれたという目撃情報は入っていたのだ。
証拠を隠すために切断を強要していることは間違いない。
質問:情報は直接現地から電話で入ってくるのか?
ツェリン:今は危険すぎてそんなことはできない。
これらの情報はすべて成都とか他の中国の都市から送られてくるのだ。
僧であれば、アバを変装して抜け出し、中国の町に着いて初めて電話やメールを送ることができるのだよ。
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カム、カンゼで尼僧が一人で抗議デモを行い逮捕される。
ダラムサラ3月17日付、TCHRD(チベット人権民主センター)リリースより:
http://www.tchrd.org/press/2009/pr20090317a.html
センターに入った情報によれば、カム、カンゼ県チンカ村にあるゲマ・タオ尼僧院の尼僧ロプサン・カンド21歳が3月6日午前10時頃一人で抗議デモを行った。
彼女はタクチュ橋からカンゼの中央政府庁舎に向かって一人で抗議の行進を行った。
彼女はパンフレットを配りながら、
祈祷の旗を掲げ、
「チベットに自由はない!」
「チベット人よ、立ち上がれ!立ち上がれ!」
「法王に長寿を!」
「中国政府はすべての政治犯を解放せよ!」
と叫び続けた。
この勇敢な一人抗議デモも長くは続けられなかった。
数分後には5台のバンで駆け付けた保安部隊に彼女は囲まれ、
その場で激しく暴行され、
拘置所に連れて行かれた。
現在、カンゼ国立病院の前に新設された刑務所に収監されているという。
友人や親せきの者が集まって警察署に彼女の安否を尋ねに行った。
警官は「もしも彼女がそのような活動をしたならば、死ぬしかない。彼女は重大な違反を犯したのだ。お前らが、彼女の安否を尋ねる意味などない。
みんな、このことを決して外の世界に知らせてはならないぞ」と返答した。
ガマ・ダオ尼僧院はカンゼから16キロ離れている。
有名な巡礼地であるカワ・カルポに通じる街道上にある。
ここの尼僧たちは去年チベット全土に抵抗の波が起こった時、大きなデモを行った。
今も、その時逮捕された5人の尼僧が中国の刑務所で服役中のままだ。
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その他、TCHRDは最近再び度々ニュースを流しています。
同じ17日付で、日本でも公開されている「LEAVING FEAR BEHIND ( Tib: Jigdrel).」の制作を助けたラプランの僧侶ジグメ・ギャンツォ40歳が再逮捕されたことを伝えています。
http://www.tchrd.org/press/2009/pr20090317.html
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3月14日にはカンゼで四人の若者が抗議デモを行い逮捕された。
http://phayul.com/news/article.aspx?id=24219&article=4+arrested+in+Kardze%2c+6+in+Nyarong
四人はティンカ地区スサダ村出身のナムセル・ドルジェ28歳、カルマ・ノルブ17歳、リンチェン・ワンセル16歳、サンゲ・ツェリン17歳。
親戚は拘置所への差し入れを拒否されているという。
この中カルマ・ノルブの父親は去年のデモに参加し、現在監獄にいるが相当衰弱していると伝えられている。
他の二人の兄弟サンポとドルジェも「中国の政策に反対した」罪で3年の刑を受けている。
その他、ツェンツァのニャロン・タシ・チュペル僧院の僧侶6人が3月10日にラスルの儀式を行ったとして逮捕された。
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この数日ようやく3月10日前後の様子が伝えられて来始めたようです。
カンゼを中心に各地で小規模の抗議活動が起こり続けていると思われます。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)