チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年1月18日
後継者の話を急ぐ必要はないと法王
このバンガロールのTCV大学の敷地に隣接する小高い丘の上に、ダライ・ラマ法王の老後のパレスを作る、という計画がある。
もっともこれはまだ公式なものではなく、今のところ妹さんのアマラ(ジェツン・ペマ女史)の秘密の計画と言えるものだ。
アマラ曰く「法王様もお年を召された。ダラムサラには緊急医療体制がない。もしものこと(心臓、脳障害)が起こったときにはダラムサラでは危ない。このバンガロールなら近くに緊急医療を行える大病院が沢山ある。将来近いうちにこちらに移られる方が良い」と。
確かにその通りではある。
ではあるが、本当に法王がダラムサラを離れられるかどうかは疑問だ。
私はこの計画を任されてはいるが、まだ本気で図面を描く気にはなれず、スケッチ程度しかやってない。
このところ何度もその丘を歩きながら、そんな法王の老後のことなどあまり考えたくないとも思うのだ。
チベットになら、喜んですぐに図面に取りかかるであろうにと思う。
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そんな法王は、このところ毎日インドの中を移動され、活躍されている。
法王はサルナートで行われている「仏教と科学国際会議」の開会式に出席された後、デリーに戻られ17日にはthe Jamia Milia Islamia 大学というイスラム系の大学で行われた国際会議に出席された後、南インドのポンディチェリーに向かわれます。
ボンディチェリーに20日、チナイに21日、その後ダラムサラに戻られます。
これに先立ち、ヴェナレスで16日行われた記者会見の場で「チベットは死刑を宣告されたようなものだ。如何なる民族もその精神を失えば死んだも同然だ。中国は計画的にチベット人の精神とチベット文化を破壊しようとしている」と語られた。
http://phayul.com/news/article.aspx?id=23633&article=Chinese+people%2c+not+govt%2c+gives+me+hope%3aDalai+Lama
後継者についての質問に答え
「私の健康状態は良好だ。だから後継者の話も急ぐ必要はない。
ダライ・ラマ制度の存続についてもチベット人の意思に従えば良い。
ある人たちはダライ・ラマ制度はチベット人民族にとって必要欠くべからざるものだと考えているが、それは本当ではない。
もちろんある時期においてはそれがチベットの文化と国家のシンボルのように重要なものとなっていたこともある。
しかし、今はそれも必衰のものではない。変えることもできる。
チベットの歴史は考古学的発見によれば一万年~二万年前に遡ることができるという。
チベット仏教は少なくとも1500年の歴史がある。
それに比べてダライ・ラマ制度は数百年続いただけだ。
だから、論理的には将来消えてもおかしくない。
しかしチベット民族は存続し続けるのだ。」と答えられた。
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こんなに誠実な法王に対し中国は又しても「チベットの発展を妨害している」と非難を浴びせています。
http://phayul.com/news/article.aspx?id=23629&article=China+Blames+Dalai+Lama+of+’Sabotage’
最近の新華社ニュースの中でチベット共産党書記チャン・キンリは「今やチベットの民衆は改革解放の成果を享受し、自らがその地の主人であることを自覚しつつある」と主張した。
新華社によれば新たな計画として、来年にはラサから40キロに及ぶチベット初めての4車線の高速道路が完成させ、チベット全土に道路網を整備し、2015年までに全土に電力を供給するという。
それにも関われず、「ダライ・ラマとその一味は常に妨害活動を行い、あらゆる方法でチベットの発展を阻害しようとしている」
「<僧衣を纏った狼>であるダライ・ラマは祖国を分断しようと試みている」と主張している。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)