チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年12月15日
ダラムサラの禿鷹と朝焼けと子供たち
今日は朝から、ブッシュ大統領が自身目がけて投げられる靴をひょいひょい避けるシーンを何度も見せられました。
「犬」と呼ばれても「よけるのがうまいだろう!」と自慢するしまつ。
バカは打たれ強くなるのも簡単なのでしょうかね。
「中国の誰かも訪問先で色んな目に遭う。こういうことが起こることもあるさ」とこれは的確な比較でした。
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さて、今日は朝撮った写真とか載せて、軽い話でもしましょう。
今年のダラムサラは本当に温かくて昼間は半袖でもいいぐらいです。
町には子供たちが急に増えました。
今年は学校の冬休みが例年より少し早く始まりました。
家から通っている子と寄宿舎を出てどこかに行くことのできる子は、これから来年の3月9日まで長~い冬休みです。
二日前に内にもいつものツェリン・ノルブがスジャ・スクールからやってきました。
しかし彼は5日しか休みはないと言ってます。
来たばかりの子どもたちには冬の間も補習クラスがあるので、休みはほとんどないそうです。
彼は家に着くなり「弟がチベットから逃げて来て、今ネレンカン(一時収容所)に来てるらしい。会いに行かないと」という。
よく聞くとお母さんの兄弟の子供ということで、従兄のことらしい。
さっそく、収容所に言ってみたが、見つからない。次の日の朝もいない。
探し続け、やっとツクラカンで働いている一人のおじさんのところにいることが判った。
この人は親戚ではないが同郷ということで子供を何日か面倒みていたという。
二人が最初に会った時の喜びようは、子供同士というより、仲のいい大人同士が苦難の後に再開した時のような喜びようでした。
子供の時から一緒に遊んだことがあるそうです。
昨夜は二人一つのベット、一つの寝具で仲良く寝ていました。
ツェリン・ノルブはこの前の試験でもクラスで一番だったとか、その従兄も中国の小学校で最後の試験は2番だったと威張って言ってました。
この二人、ほっておくといつも一緒に勉強しています。
遊牧民の集中力を感じます。
二人ともチベットの広大な風景の中で遊牧民の子として生まれました。
一つずつの家族はおよそ歩いて2,3時間ほどの距離で散らばって暮らしているとのこと。
車の通れる道まで馬で一日かかり、それからまた一日車に乗るとナチェンに着くそうです。
里には高い雪山があり、湖もあって本当に綺麗なとこなんだ、と二人とも言います。
従兄のジャヤン・タシは12歳で、これから南インドのセラ僧院に行き、僧侶にあるそうです。
僧侶の伯父さんがそのために亡命させたとのことです。
本人に意地悪な質問を一つ「本当はどっちに行きたいの?普通の学校と僧院と?」
「学校」と答えました。
「ふ~~ん、」とノルブと顔を見合わせたまま、それ以上はその話はやめました。
ノルブは嘗てデブンの僧侶だったこともありますが、もう僧侶にはならないと言ってました。
そのノルブに「ぺー・ラモの日」を知ってるか?と聞いた。
「知ってるよ。その日に女の子にお金を少しでも上げないと、大変なことになるんだよ。
その日にはペー・ラモの力が少しずつ女の子に分けられるから、もしも怒らせると大変な祟りがあるんだよ!」
と解説してました。
このところ順調にどんどん亡命者がダラムサラに辿り着いています。
子供の絵のクラスも再開されました。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)