チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年10月29日

BBCラジオ「チベット問題討論会」

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27日BBC ラジオ放送において「果たして闘争を諦めるべき時はあるのか?」という
議題で50分にも及ぶチベット討論会が開かれた。

中心はロンドンの法王事務所代表のツェリン・タシだが世界中から、例えば同じく民族のアイデンティティーのために戦うバスクや、アイルランドの闘士、グルカ、ブルガリア人、中国人、権利獲得のためのキャンペーンという戦いのみではあるがエイズ、ゲイ活動家も登場していた。

ただ、最初から法王の発言された「私は諦めた」の御言葉を正しい文脈において捉えずして、「チベット問題解決にかかわることを諦めた」と捉えて一般論的話題にしたようだった。

正しくは、「対話における、中道(譲歩)路線は(中国から全く肯定的反応がないので)諦めた」と取れるのみなのですが。これはチベット人の中でも解釈が分かれるところです。
そのうち法王自身が明らかにされることでしょう。

BBCでは「正当な戦いを諦めるべき時は有るのか?」
「この時期に法王がこのような発言をされた意味は?
果たして正しい時期と言えるのか?」が主題でした。

もちろんほとんどの活動家は「正義の戦いに終わりはない」と答え、
「諦めることは決してないが、壁にあたって方針転換をするということはある」とか「以前の武力闘争路線はもうやめた」とか。
中には「まるで不可能と判ればあきらめることもあるだろう。人生だってそうだし」
という人もあった。

時期については「今、世界中は経済危機の話ばかりだ、チベットの事などとっくに忘れられている。
この時機にもう一度チベットを話題に乗せるための方便なのか?
それとも中国の経済破綻を見越しての大胆な政策変更なのか?」とその効果に疑問を呈する人いた。

いずれにせよ、時機については29日からダライラマ特使と中国側の話し合いが開かれるとのことですから、「苛立ち」を示すことで、中国を牽制したことは確かでしょう。
「今なら、こんなに譲歩しているのだし、話は簡単だ。正しくチベットの現実に向き合ってほしい。問題は確かにあるではないか。私と直接話をするなら問題は必ず解決する。今回もだめなら、あとは知らないぞ!」と言ったところでしょうか?

これまでの「中道路線」について、「中国共産党に対してのみは成功しなかったが、外国や中国の知識人に対しては大いに成功した政策だったと思う。中国は嘘を言い続けることしかできなかったのだし」というのもあった。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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