チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年10月27日
続・TCVにおけるダライラマ法王の発言
先週土曜日に行われた、TCV創立記念日における法王のスピーチは「中道路線の破棄」とチベット社会にも受け止めら、波紋が広がっているようです。
正確には「対話」における「中道路線の破棄」というべきか?。
もっとも法王は「この中道路線は中国の知識人の間にますます多くの支持を得始めているとの確かな認識はある。中国の人々に対する信頼を失くした訳ではないし、引き続き彼らを説得することを諦めた訳ではない」と付け加えられていました。
今月末に予定されている「第8回会談」を前に、
一方で中国政府のこれまでの誠意のかけらもない対応、政策を非難し、
来月の「チベット全体特別会議」を前に
一方でチベット社会に対し「全面的に将来を自分たちで決めろ」
とおっしゃっているようです。
見方を変えれば、「中道路線の失敗、行き詰まりを認め、決定を民衆に託した。自分が前に出ていいことはない。両方から標的とされるだけだ。問題はいずれチベット人民の問題だ。だから私は少し引くから、自分たちで決めてみなさい」
ということか。
「中国首脳部からの時機を得た適当な反応は全くなく、ダライラマとしての私の地位は、チベット問題を解決するための助けになるどころか、障害となっている」
と語り、
「弾圧による極度の恐怖下においてさえ、チベット人たちは勇気を持って彼らの希望と中国政府に対する深い不満と抵抗の心を示した」
と、立ち上がったチベット人たちの勇気を讃えられた。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)