チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年10月18日

チベット医学院院長ダワ先生お話(続トゥクダム)

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7f90aef2.JPG今日は朝から、チベット人が大勢道路工事に精を出していた。
ダラムサラの道は雨季が来るたびにむちゃくちゃになる。
法王のお住まいのある丘まで登る道はガタガタだ。
手術後のダライラマ法王が車の中で揺れるのを少しでも減らすことができるのではないかと、みんな凸凹に砂利や土を入れ、懸命に道を均すのでした。

ーーー

チベット医学院院長ダワ先生の講義

今日午後3時より、ダラムサラのチベット医学院の一室で、特別に日本人グループのために院長のダワ先生自ら、チベット医学について短い講義をして下さった。
先生はダライラマ法王の主治医の一人でもあられる。
画家としても有名だ。

オーガナイザー兼通訳はもちろんチベット医学院の医師O氏です。

普段私ははっきりいってチベット医学にはあまり関心がないのですが、それでも今日はブログのネタの質問でもしようと出かけてみました。
O氏と一緒に一度ヒマラヤに薬草採集には行って見たいと思いますが、私はダラムサラで普段病気になると西洋医学の病院に行くほうです。

話の内容については、、、まとめて言えば、チベット医学の原理は世界の構成要素である土、水、火、風、空の所謂五大元素のバランスが崩れることによって病気が起るのであるから、このバランスを取り戻すよう外から薬を投与する、ということらしい。

もう一つの要素として、ルン、ティーパ、べーケンという三体液(漢方に置き換えれば気、血、水)の概念があって、それぞれ執着、怒り、無知から生じるという。
この三つのバランスが崩れることからも病気は生じるとされる。
この三つのバランスがとれていることが健康な状態という。

ーーー
こんなことしか覚えていません。この二つのファクターの関係については説明ありませんでした。

話の途中で先生が「身体はもちろんのこと心もこの五大によって生成される」
と言われた。
これはひょっとして聞き間違い?と思い、講義の後質問した。

「先ほど先生は心も五大により生成されるとおっしゃいました。すると心は物質だと認められるのですね?」

先生「心は確かに微細な五大によって生成される」

とだけ答えられたのではないのですが、結局私の聞きたいことの答えははっきりしませんでした。チベットではタモー(微細)という表現で物質世界と心的世界の境目を超える(ごまかす?)ことがよくあるように感じます。

後、気になったのは三体液のバランス、つまり執着、怒り、無知のバランスがとれていることが健康ということなら、仏教の目的である執着、怒り、無知を無くそうという努力は不健康人間を作り出すことになるのか?
この三つがバランスよく強烈でも健康ということなのか?
、、、
とばかなことは考えないようにしましょう。

質問2「トゥクダムについてチベット医学ではいかなる説明がなされるのか?
最近トゥクダムに18日間止住されていたガンデン・ティパにおいては脳波が観察されたというのは本当か?西洋の医者はどう解説すると思われるか?」

先生「トゥクダムは誰にでも起こるわけではない。本当の修行者にしか起こらない。
<原初(不生、本然、光明)の心>に留まっている状態とされる。私は宗教者ではないのでよくは解らない」

「脳波が観察されたと確かに聞いている。今データはアメリカ送られて検証作業が行われているという。結果を待ちたい」

ーーー
と期待したような面白い答えはなかったわけです。
ところが、講義のあと、今このダラムサラでトゥクダムに入られた高僧がいるという情報を0氏から聞いて。

もの好きにも、さっそく二人でそのリンポチェの家に向かった。
ラプセル・リンポチェと言われるゲルク派の高僧は3日前に心肺停止された。

その亡骸は横たえらえ、周りはカタ(儀礼用チベットスカーフ)の垣根ができていた。
お顔は残念ながら拝見できなかった。

これでは判らない!と思ったがどうしようもなかった。腐臭は確かにしなかった。

ちょうど世話人の一人が知り合いのタンカ画師だったので、彼に様子を聞いてみた。
彼は「顔色は白くなっており、見た感じは所謂トゥクダムの状態ではないと思う。でも確かに腐臭はないが、、、」という話でした。
これは、もしかして勘違いの一つかな?と思い、帰ったのでした。

奇蹟の証人にはなり損ねました。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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