チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年10月4日

ダライラマ法王による千手観音の潅頂、質疑応答

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ceb04184.JPG今日は台湾グループに対する講義5日目であるが、テキストはほぼ終わっていた。
ナーガルジュナの「菩提心釈論」の最後の部分をさっと読まれて、すぐに潅頂の準備に入られた。
今日は朝から千手観音の潅頂があると予告されていた。

法王曰く「どうも、モンゴル人やヒマラヤ地区の人を筆頭にアジアの人たちは潅頂ときくと喜んで加わり、テキストの講義と聞くと遠のくという傾向があるようだ。西洋人はこの点、反対だ。潅頂ばかりありがたがるのは良くない傾向だと思う」

そのとおり、この日は一般のチベット人もいつになく張り切って、大勢ツクラカンに押し掛けていた。

まず最初に参加者全員にウパサカの5戒を授けた。
「このうち<酒を飲むな>は難しいという人は4戒でもいい。ただ少しだけ飲むようにするといい。3戒でもいいが、とにかく約束した戒律はしっかり守ることだ」

次に「発願の菩提心」の儀式を行われ、菩薩戒を授けられた。

潅頂に入られ、空と一体となった光明の心から如何に仏神を生起させるかを説明された。

ーーー

午後は台湾グループに対する質疑応答のセッションに日本人、韓国人の参加が許された。
(もっとも実は私は昨日から風邪を引いたので、ツクラカンに参上するのはやめて家でラジオで聞いてました。最近はライブ電波が強くなったのでチベット語で良ければ少々離れた所にいても聞けるのだ。家で横になって聞いてると眠くなったりしますがね)

初めに、「皆さん仏教に興味を持ち、熱心に私の話を聞いてくださって有難う」
と挨拶された。

「中国は宗教的には仏教の先輩として尊敬している、しかし政治的には今年の3月以降厳しい状況が続いている。特に中国は私が中国に敵対する者というプロパガンダを続けている。4月にアメリカ、イギリス、ドイツに行ったが、私に反対する中国人のデモを見かけた。私は中国人と話す機会を大事にし、自分の立場をあらゆる機会に表明した。ネットやメディアを通じて中国人に訴えた。
6月にオーストリア、アメリカ、フランスを訪問したときには、私に反対するデモはほとんど見かけなかった。
シュクデンの者たちは来てた。彼らの方が中国より少しひつこいようだ。

中国が何と言おうと、私は一介の僧侶だ、構わない、完全ではないができる限り仏教の修行をしている、だから何でもない。
ただ、真実を知ることのできない、中国人たちが「ダライマラは悪いやつなのだ」と思っているなら、これは少し悲しいことだ。

中国人は嘗て熱心な仏教徒であった。
いつか本土の中国人に仏教を説きたいと思っている。
カーラチャクラの潅頂をやりたいとも思う。

2002年から中国との対話が始まって以降、中国が台湾に行くなと言っているので、なかなか行きたくとも台湾にいけない。中国の本土にももちろんいけない。
そんなとき台湾からこうして仏教を聞きに来てくれたことは本当に喜ばしいことだ。

本土中国の友人と会うことがあるなら、本当のチベットのこと、ダライラマのことを是非知らせてほしい」

質問の中に、
「不害(非暴力)と害(暴力)のどちらが強いのでしょうか?今の世の中では暴力が勝ち、非暴力は無力に見える。たとえばチベットにおいても中国の暴力の力に非暴力のチベット人は負けているではないか?」
というのがあった。

法王答えて曰く、
「ちょっと見には暴力が非暴力に勝っているように見える。
でも、暴力を使うにはこれを正当化するために嘘をつくことになるであろう。
人間社会では正直で誠実であることが大事だ。真理には常に力がある。虚偽には本来的に力がないものだ。
だから見た目には暴力は力がありそうだが、社会においては本当の力を持つこはできない。
長期的には暴力に対し非暴力が勝利すると考える。
皆さんはどう思うか?」
これに答え、台湾グループは「そうだ!その通りだ!」と答えた。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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