チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年9月30日

ダライラマ法王台湾人グループに法話

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1bd55cce.JPG今日から5日間、法王はツクラカンにて台湾人グループのリクエストに応え教えを行われる。

テキストは二冊、ナーガルジュナ(竜樹)の「菩提心釈論」、
カマラシーラ(蓮華戒)の「修習次第・中編」

はじめに法王は約600人の台湾人に向け「ニイハオ!」と挨拶された。
そして「かつて台湾には二度行ったことがある。
必ず何度も訪問したいと思っていた。
しかし2002年から中国との会話が始まってからは、なかなか行くことができなくなった。
しかし今もいつでも訪問したいとは思っている。
近いうちに行けるようにと私は祈っている。
だから皆さんもそうなるよう祈って貰いたい」
と言われた。

「仏教とは何かをよく勉強して知ることが大事だ。
三宝についてもよくよく知ってから初めて信を起こし帰依すべきだ。
お経を唱えるときには意味を解って唱えるべきだ。
さもないと祈りのお経だけで利益があるとは思えない。

家を建てるときには、始める前には図面を描いて、すべてを決めてから始めるであろう。
そのように悟りを得ようとする者は、最初の一歩から最後までの道について。出来るだけ完全な知識を得たのちに歩き始めるべきなのだ。
だから私はいつも仏教とは何かを説明することに努めているのだ」
と話され、
まずは仏教と他の宗教の違いを説明されたのち、ナーガルジュナのテキストに入られた。

菩提心を3つに分け
1、顕密共通の菩提心。2、無上ヨーガ以外の密教の菩提心。3、無上ヨーガの菩提心とする。
このうち3番目の菩提心を最上とする。
空を対象として見る心の微細さにおいて優っているから。
最終的なクリアーライトの心によって空を見るからと説かれる。

その時の空の見解も、説一切有部、経量部、唯識派の空観を超えた中観派のそれが最上である、として少しそれぞれの違いについて説明された。

この身と心を離れたあたかもこれらを支配しているような、永遠で唯一、独立した<我>は認めない(人無我)が、外の物質界の究極の最小単位である極微(原子)、及び内の最小単位である意識の一刹那は実体として存在すると観る説一切有部、経量部
を超え、
外界の現れはすべて内なる心の反映、意識の本質として成立していると説く唯識の見解を知るべきだ。
しかし最終的には意識、心と呼ばれるものも実体のない幻のようなもの、始まりも終わりもなく捉えようのないもの、名のみの存在であると知る中観派の見解に至る。
名も空、悟りも空、空も空と理を明らかにされた。

第40偈
心は単なる名前である
名前以外には何もない
唯識派は名のみと見ているが
名前にもその自性はない

第41偈
内にも、そして外にも
あるいはその両方の間にも
勝利者たちは心を見いだせなかった
だから心は幻のような本質のものである

第42偈
色や形の分類
主体と客体
男性、女性、両性などの本質は
心には住していない

第43偈
要約すると仏陀たちは
見たこともないし、見ることもない
自性を持たないという自性を持つものを
一体どうやって見るというのか?

第45偈
認識されるものと認識するもの、という様相を持つ心を
如来たちは見ていない
主体と客体の存在するところには
悟りはない

第46偈
特徴もなく、生じることもない
存在するようになったのでもなく、言説の道もない
虚空と菩提心は
さとり(究極の菩提心)と不二の特徴を持っている

(マリア訳)

ーーーー

今回は同時通訳の前回と違い、法王が話された後、通訳が入るというスタイルだったので少しのんびりムードの講義でした。

でも最初に法王は「二回目の参加者とかは眠くなるかもしれないね。でもそういう人を見たらすぐに小突いて目を覚まさせるように!ヒヒヒ!」
と指示を与えていらっしゃいました。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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