チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年9月27日
法王の教え3日目、1987年9月27日ラサ蜂起記念日
法王のティーチングの場合、一日の内容があまりに濃く、深く、多岐に渡るためいつもノートを取った後には、それを眺めて呆然としてしまう。
いつか時間がある時に、と思いつつこうして年を取るのですね、、、
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まとめて「仏教とは如何なる教えか?」について話された。
話の終りに「これで皆さんはこれから誰かに<仏教とは何か?>と聞かれたときに答えられるでしょう」とおっしゃいました。
最後に密教の話を短くされました。
大乗顕教の道を<因>として、<果>を行じる密教の道がある。
<果>としての二身{自性身(法身)、変化身(報身、応身)}を先取りして行ずる。
はじめに、空の瞑想(等引智)の中から曼荼羅とその住人である神仏を現す。
何れにせよ、まずは空を見る心を得なければならない。
様々な空の見解の中でも中観帰謬論証派の言うところの、「名のみ」の空の見解によるものが最上だ。
密教を行ずることにより、所智障を効率よく断ち悟りに素早く達するというわけだ。
テキストが終わった後、ウパサカ戒としての五戒を説明し、授けられた。
願の菩提心を起こす儀式をされ、続いて観音の潅頂を授けられた。
これで午前の部が終わった。
一般の人たちはここまでだった。
特別にシンガポールと日本韓国からの参加者のみは、午後から質疑応答、そのあとグループ記念写真があった。
質疑応答の最後に法王は改まった口調で、中国人が大多数のシンガポールの参加者に向い、英語で次のように話された。
「このところ中国政府は私やチベット人が<反中国>を標榜しているかの如きイメージを広めている。
そのせいか私が欧米を訪問するときには必ず中国人が抗議のデモを行う。
私はこれを見て悲しく思う。
私は決して<反中国主義者>ではない。私は常に中国を尊敬している。
歴史ある、かつてたくさんの文化を育んできた、文字を大切にする人々だ。
特に料理は素晴らしい!世界中どこにいっての中国料理はある。
確かに、今の中国共産党の不正義には反対する。
チベット人に対する弾圧政策に反対する。
しかし一度も中国人に反対したことはない。
チベットは中国の隣人だ、長く友人として付き合ってきたこともある。
我々は中国の「ベストフレンド」だと常に思っている。
これをどうか知っておいてほしい」と。
拍手が沸いた。
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<1987年9月27日蜂起記念日>
今日の夕方からは9-10-3(元政治犯の会)主催のキャンドルライトビジルが行われた。
この日は1987年9月27日、デブン僧院の僧侶21人に先導された多くのチベット人が59年以来最大規模のデモを行った記念すべき日だ。
写真はツクラカンの前に集まった、今夜のキャンドルライトビジル。
それにしても集まりが少なすぎるような、、、
3月の熱狂はどこに行ったのか?
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)