チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年7月25日
パルデン・ギャツォ氏証言会、中国当局、隠遁場を破壊し宗教美術品を押収
昨日のポレポレ座におけるパルデン・ギャツォさんの証言会、狭い会場に目一杯の約100人ほどが集まってくださいました。
狭苦しい状態と、つたない通訳で申し訳有りませんでした。
しかし会場が狭い分、パルデンさんを間近に感じられ良かったかも?
パルデンさんも終始リラックスされた様子で話しを続けてくださいました。
しかし内容が内容なので、途中会場で聞かれている方の中には余りに凄惨な拷問の描写を聞き涙ぐまれておられる方も多かったようです。
パルデンさんも一度、
同房の衰弱し切った一人の仲間に水を請われた時、
「水は全くないので、これしかないと言って自分の唾液を何とか絞り出し、口移しに与えた」
それを飲み込んだ彼が
「(監獄を出て、もしも外国に逃れることができたら、この状況をみんなに)知らせる仕事をしてくれないか、、、」
と言ったあと息絶えた。
と、この話をされたとき思わず涙ぐまれた。
これには私も涙をこらえるのが精いっぱいだったが、会場の多くの人たちが涙した。
77歳になるパルデンさん。
こうして無念の内に死んで行った多くの仲間のことを思い出しながら、チベットの惨状を世界に訴え続けることを自分の使命と心に強く決心していることが感じられました。
パルデンさんは日本の後すぐにまたアメリカに渡り、シカゴからウィスコンシーのマジソンまで行進されるそうです。おそらく200~300キロはあるでしょう。
夏の炎天下を77歳の身体を持って歩かれることは大変な負担になるはずです。
無事に歩き通されることを祈ります。
昨日の夜皆で打ち上げで集まっていた時、携帯にパルデンさんからメールが入りました。
「今日は本当に気持ち良く話ができ私も嬉しかったです」
と。
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連帯委員会リリース 2008年7月24日
Y女史訳
http://www.stoptibetcrisis.net/pr240708.html
Authorities Destroy Retreat Centre and Confiscate Religious Artifacts:
<中国当局、隠遁場を破壊し宗教美術品を押収>
信頼できる情報筋によると、12年ほど前、中国のウタイ・シャン(五台山)で長年隠遁生活を送っていたツェジンと呼ばれるチベット人ヨギーが、後援者より10万元の寄付を受けて新しい隠遁小屋を10件ほど建て、ペマ・ゴンと名づけられていた。
これらの小屋は特に、隠遁生活を送っていて住みかの問題を抱えているような僧侶達の悩みを軽減するために、建てられていたものだった。
ツェジンはゴロ・ポンコル・メマ出身で、その慈善的な態度により、この仏教の聖地に巡礼に訪れたり隠遁生活を送りにくる僧侶達によって、大いに尊敬されていた。
しかし、チベットにおける平和的なデモの拡大に続いて、中国政府はウタイ・シャンで隠遁生活を送っていたチベット人僧侶達に、その場から立ち去るように、と命じた。
続いてツェジンも出身地に戻るよう強制された。
立ち去る前に、ツェジンは一人の中国人僧侶にペマ・ゴンを託したが、あいにくこの中国人僧侶も2008年7月19日に中国当局によって強制退去させられてしまった。
10体ほどの貴重な仏像や仏教の尊格を描いた10枚の絵画(タンカ)を含む、ペマ・ゴンのあらゆる財産は没収された。
その翌日には、療養所は跡形も無く完全に破壊されたという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)