チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年6月18日
サカダワ、続ジャミヤン少年の証言、続ダラムサラ発共同通信
今日はサカダワのサカダワ?満月の日。チベット歴によれば、今日は仏が生まれ、悟り、涅槃に入られた日です。
熱心な人は午前0時から寺に集まり五体投地等を始めます。今日だけはコルラの道を五体投地で廻るTCVの学生とかが見られます。
私も後で寺に行ってみようと思っていますが、何せこのところダラムサラはまったく雲の中、雨も降っててコルラは大変でしょう。
それでもここには宗教行為をなす自由があります。
RFAの中でもチベットの中の人達がいかに宗教的行為を禁止され、つらい思いをしてるかについてよく報告があります。
今日なで本来さらチベット人は総出で近くの僧院、寺院に集い様々な宗教行事が行われる日です。チベットの人達は今日は特別につらい日となってしまっていることでしょう。
RFAの中で、このような状況においていかに仏教を守るかについてある高僧が話されていました。
「仏教は本来心に行じるものだ。外に行けない、寺に行けない、香を焚きに行けない、コルラに行けない、オマニペメフーンと口にするのも憚れる。そんな状況を嘆いてはいけない。仏教は心とコントロールすることだ。心に行ずるものだ。コルラに行けないことを嘆いてはいけない。
何より中国人を恨んではいけない。ニンジェ(慈悲)を心に念じて、周りの人々を出来るだけ助けるように」と。
これと同様のことは法王も何度も話されています。
しかし、チベット人が一人もいない僧院、コルラをする人も、香を焚く人も、五体投地をする人も、真言を唱える人もいないチベットは、、、もうチベットでないような、、、気がするだけだ。
日本人と結婚し、ここでおいしい豆腐を毎日作ってくれているアムド出身のジャムチェが最近話すには、「この前、故郷と様子を成都の兄経由で聞いた。
60過ぎて尼になった母が、隣町にも行けない、僧院にもいけない、いたるところに中国兵がいる、まるで文化大革命がまた始まったみたいだ、と言っているそうだ」
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一昨日のヒマラヤ越えに失敗しシガツェの拘置所に2か月入れられていた17歳のジャミヤン少年の証言について、大事なことを書き忘れてたことに気づきましたので以下補足します。
彼は峠で逮捕され、タシゾンにある軍施設に連れて行かれたが、その時一人別に呼ばれてある部屋に連れて行かれたという。
それは死体確認のためだった。なぜ彼だったのか?
彼は「自分は数年学校に行ったことがあって中国語が話せたからじゃないか?」と言ってました。
「その部屋には布でぐるぐる巻きにされた死体が置いてあった。顔まで包帯のようなもので巻かれていた。これじゃ何も判らない、というと、すぐに全部の布を取った。
裸の真白い死体があった。
それは確かにグループの中にいた尼僧だった。
心臓近くの胸と背中に撃たれた跡があった。
弾が背中から胸に抜けた見たいだった。その尼僧の出身地とか名前を聞いて来たが、知らないと答えた」
この子は本当にいろんな辛い経験をしたのだ。
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以下はダラムサラまで来てちゃんと取材してくださった。
共同通信配信、今日付けの記事です。
北京五輪企画「五輪の風―世界が見る中国」6回続きの(3)
「チベット仏教の僧侶と治安部隊が衝突。僧侶側に負傷者。約六十人が拘束されている」。三月十日朝、中国チベット自治区からのインターネット経由の情報を受け、米ワシントン中心部にある米政府系、ラジオ自由アジア(RFA)のスタッフは直ちにニュース原稿を作成。後にチベット民族居住地区で頻発した反政府デモを初めて報じるスクープとなった。
一方、チベット亡命政府の拠点、インド北部ダラムサラのキルティ僧院の分院。三月十六日朝、二十九歳の僧侶ツェリンは中国四川省アバ・チベット族チャン族自治州にある同僧院本院から「今、デモをしている」という連絡を受け、直ちに高僧に報告。約三時間後に再びつながった電話では発砲音が聞こえた。
世界各地で北京五輪の聖火リレー妨害という前代未聞の事態に発展した反中国デモ。「(中国)国内と国外が呼応し合う関係」(ツェリン)が出来上がる過程で大きな役割を演じたのがRFAとキルティ僧院だ。
RFAは米政府機関「放送理事会」傘下の放送局として一九九六年に設立された。「報道の自由」が制限されているアジアの国にその国のニュースを提供することを任務とする。ニュースの素材はその国の住民がインターネット、国際電話などでもたらす生情報だ。
ワシントンの本部スタジオからの放送をチベット自治区、新疆ウイグル自治区などで流しているが、中国政府は放送の妨害に余念がないという。
「葬送行進曲を流され妨害されたこともあった。別の周波帯に変えるなど対策を講じるほか、インターネットでも放送が聴けるようにしている」とチベット語放送部長のジグミ・ナポは激しい米中攻防を説明した。
チベット自治区ラサなど中国内で起きた一連のデモで、中国治安当局が僧侶らに対し銃器などの武力を使用したかどうかが大きな焦点となった。
治安部隊の暴力を示す根拠とされた弾痕がある僧侶の遺体などの写真数十枚は四川省アバのキルティ僧院本院のパソコンから、ダラムサラの分院に送られ、インドに拠点を置く非政府組織(NGO)チベット人権民主化センターなどを通じ世界を駆け巡った。
四川省アバでの抗議活動はラサでのデモが引き金。三月十五日にデモが始まり、携帯電話による連絡で情報を得た本院の僧侶たちも加わった。デモで拘束された僧侶の解放を求めて警察署に向かい、抗議行動は市民も含め一万人規模に膨れ上がった。この時、警察側が発砲、計二十三人が死亡したという。
「逮捕されれば拷問されるし、死も覚悟していた。しかし中国の弾圧を世界に知らせるには北京五輪が開かれる年しかないと僧侶たちは思っていた」とツェリン。
RFA編集主幹のダニエル・サザーランドは「中国内外のチベット人同士が事前に連絡を取り合いデモの計画を練ったとは思わない」と述べ、「ダライ・ラマが扇動した暴動」との中国政府の見解を否定する。(敬称略)(共同)舟越美夏
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チベットはヒマラヤの奥の単なる美しい国ではない、法王はただの指導者ではない。
人類全体で守るべき貴重な霊的、教えの宝庫、心の故郷なのだ。
己の心を守るがごとく、チベットを守らなければいけない。
貴重な宝物が今中国により消滅させられようとしている。
一度なくなれば二度とその利を味わうことはできない。
世界は灯火を失い、暗くなる。
サカダワにこの貴重な宝物を守ることを誓うべし。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)