チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年6月8日

続チベット人僧侶がテロリスト!?日本の報道。

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76819b02.JPG昨日の<チベット人がテロリスト!?>の記事に関しY女史が
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=831413656&owner_id=1195669
でフォローしてくださっています。ご覧ください。

一方ある新聞関係の友人の反応としては、

「コメントされた方がどの記事について言及したのか
わからないので難しいですが、
「日本の新聞が事実として報道した」ということはおそらくなく、
そのコメントを書かれた方が、
新華社は○日、~~と報じた」という記事を読まれて、
「~~」の部分が引用ではなく事実として報じられていると
読み違いをされたのではないかと思います

ロイターのような注釈や引用を日本の新聞が
つけられないのは、単に、日本で外電翻訳を
担当している人には、「重要部分のみ抜粋して
訳す」ことが求められていて、
自前ソースでの注釈コメントをつけられるほど
確認の余裕、余力がないからかと。
自社ソースとして注釈コメントをつけるとなると
そこの部分をどう突っ込まれても立証できる
何らかの根拠が必要になってきますので。

※例えば、ロイター電は『海外メディアは同自治区への
 立ち入りに中国政府の許可が必要で……』とコメントを
 つけています。でも、日本メディアがロイター電をつかうと、
 「ロイターは○日、『新華社が○日~と報じた』と報じた。
 同電は~~であるとコメントした」
 という孫引き引用になって非常にまどろっこしく格好悪い
 ので、この場合、ロイター翻訳は使わず、一次ソースの
 新華社配信を使うことになります。
 そこに補足コメントをつけるには、自前で、記事化する
 担当者が確たる事実として確認した内容でなければ
 なりません。
 新華社翻訳を北京の記者が作っていれば、
 チベット取材が外国メディアを締め出しているのは
 自明の理であるわけですが、
 外電の翻訳作業は、東京本社の外信部内勤の若手が、
 新華社だけでなく世界中から殺到するAP、ロイター、AFP
 などからのニュース配信のすさまじい量を、右から左に
 ひたすら抜粋翻訳している流れ作業でやってます。
 チベット関連の記事だからといってチベットに詳しい人間が
 訳しているわけではなく、その日によって、専門はロシア
 だったり欧州だったりする人が交代でやってます。

 もっとたくさん記者がいるA読売だと、たぶん、中国担当と
 インド担当を分けていますので、中国担当者はひたすら
 新華社を訳し、 亡命政府のリリースも確認したりしているんだろうと思います。
 要するに、新華社配信を翻訳するときに、「亡命政府側では
 どんなリリースを出しているか参照南アジア担当者が、タイやインドの英語
 ソースを確認し、たまにAFPやロイターを見て
しよう」ということが、
 担当が違うためにできなくなっているんじゃないかと
 想像します。

(さらに蛇足)

日本の新聞が新華社電をよく引用するのは、
新華社電が中国政府の意向と非常に密接に
つながっていて(つうか国営ですから中国の
公式発表そのものなんだけど、)、
中国ウオッチャーにとっては、
「何を報じたか」それ自体が、中国政府の動向を
推測・推察するリトマス試験紙のような役割を
持っているから……という意味もあるようです。

報じた内容が事実かどうかよりも、そこから
「今中国は何を主張しようとしているか」が
透けて見える、そこから中国の状況が分析できる。
それを考えるために新華社があるんだ、
と力説している人がいました。

(外務省のチャイナスクールの人たちとか、
 中南海取材の長い日本の「中国通記者」は
 こういう傾向があるようです)」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そうですか、プロはそう読むのですね。
細かいニュアンスを読み分けて味わうということですね。
でも忙しい日本人一般の人がそんなとこまで読むでしょうか。
第一新華社伝の性格を知ってる人は多くないでしょう。
<チベット><僧侶><テロリスト>が頭に残るだけじゃないでしょうか?

実際このことでは普通の友人から「チベット人もとうとうテロに走ったのですね!」
とか「これって本当なんですかね?」とか言ってくるのだ。

この前も言ったけど、まずもって、
チベットの中から命掛けで外に電話を掛け、デモなどの見知ったことを伝えてくる、そういう純粋なチベット人の言葉を信じなくて(信じなくてもいいが伝えるといい)、或いは聞こうともしないで、北京創作の記事をそのまま載せるという感覚が解らないと言いたいのだ。
そちらの人にとってはチベット人の言うことを信じたりして、私こそバカと思われてるのでしょう。私は仏教徒として一切を疑って掛かりますが。

法王がイギリスで「もしも次回の会談においても確かな前進がない場合には、暴力行為を含めた暴動の起こる可能性がある」
とおっしゃったとき、私はすぐに、これはひょっとして危ない発言ではないか?と思った。つまりこれを聞いた中国当局は「これは使えるな、、」と思ったのではないか?
テロを演出することなどお手の物の彼らが対談後、あるいはオリンピック後にチベット人をテロリストにしてしまえばいいわけだよな、、、と思った可能性はある。

この新華社の記事も、ちょっと外国の反応を見るために、その効果のほどを試すために話を作り、報道したとも思えないだろうか?
日本では効果あったというところか。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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