チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年6月2日

チベットから奪われたもの、中国がくれたもの。

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チベットの森林伐採

中国人はチベット問題をこちらが口にするとすぐに、
「チベットは昔から中国の一部だった」と
「中国は十分チベットに経済援助を与えている。それなのに恩知らずのチベット人めが、、、」
と始める。日本人の中には本気にこれを信じてる人も多いとか。新聞のせいかね?

さてさて、では一応チベット人の言い分も聞いてみようではないか。

http://www.stoptibetcrisis.net/pr010608.html連帯委員会 2008年6月1日 リリース
Y女史訳

Given and Taken Away
<与えられたもの vs. 奪い去られたもの

中国はお決まりのように、自分たちがチベット人の福祉と経済発展のために数百
万元を投資したことでチベットに前進と発展をもたらした、と自慢する。しかし
ながら、かの国は常に、チベットから得たものについての真実を公開しようとし
ない。言い換えると、中国は占有を始めて以来、チベットから略奪した膨大な富
について正当な評価を下そうとせず、感謝を示すこともない。

実際、中国がチベットに返したものといえば、奪ったものとはまったく比べ物に
ならないほどささやかだ。中国が力ずく得た様々な利権―領土、軍事、政治、漢民族のチベットへの流入―を抜きにして、経済的な利益のみを考慮するとしたら、それは
まるで大海の中の一滴にすぎない。

たとえば、中国側は常に、ポタラ宮の維持・修理に巨額を費やしたことを自慢げ
に喧伝する。だがその裏で、中国は計り知れない量のポタラ宮の財宝を略奪し
ているのだ。それらはかけがえのない宝石や貴重な金・銀細工の美術品など、私
達の先祖の代から数世紀にもわたって蒐集されて、ナムセの宝物館に大切に保
存されてきたものだった。

中国が日常的にポタラ宮を利用していかに利益を搾取しているか、見てみよう。
中国は一日あたり約2000~3000人の観光客を、一人あたり100元でポタラ宮殿に入
れている。つまり、一日あたり20~30万元の収入だ。加えて、巡礼者や観光客が中で支払っているお賽銭も加えたら、合計一日あたり40万元(約600万円)は超えているだろう。

同様にツクラカン(ジョカン)においても、旅行客と巡礼者からの平均的な収入は一
日あたり20万元以上にのぼる。こうした状況を踏まえれば、中国がポタラ宮とツ
クラカンの修繕・改築にお金をかけていると大げさに自慢するのは、まったく馬
鹿げている。彼らは、ポタラ宮とツクラカンから得ている収入のごく一部から、
その費用を出しているに過ぎないのだから。加えて、ポタラ宮やツクラカン(ジョカン)からの収入の大半が何に使われているのか、わかっている者は誰もいない。

さらに、中国は年々、チベットの莫大な天然資源を略奪している。広大な森林から木を伐採し、チベット高原から大量の薬草を採取している。地下資源もしかり、もしこういった天然資源の総額を計算すれば、中国がチベットに投資したと主張する金額を遥かに超えたものになるだろう。さらに、、中国が1960~1970年代にかけてあらゆる僧院やチベットの一般家庭から没収した骨董品、芸術品の数々―貴重な宝石や宝玉、金・銀、装飾品はもちろんのこと、一般家庭からは仏様へのお供え用のバター油ランプまで奪ったのだ―それらの価値を推定すれば、中国がチベットにもたらしたほんの一滴に比べて、それらの価値は大海原にも匹敵するだろう。

現在も続いているチベット域内における危機的な状況を鑑み、我々は国連および
国際社会・国際機関に対して、以下の点を大至急要請する:

1. チベット域内に、独立した国際事実調査使節団を大至急派遣すること
2. 中華人民共和国政府に対して、自由な報道機関がチベット全域に無制限にアク
セスできる許可を出すよう、圧力をかけること
3. 中華人民共和国政府に、チベット全域における残虐な殺戮をやめるよう、圧力
をかけること
4. 逮捕・投獄されているすべてのチベット人を即刻釈放すること
5. 怪我をしたチベット人達に大至急、医療措置を施すこと
6. 人々の自由な移動を許可し、生活必需品が手に入るようにすること

チベット連帯委員会

(以上)

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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