チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年5月26日
医者がチベット人を助けると逮捕される。拷問の末
医者が患者を無差別平等に治療するのは、世界の常識。医者の良心。
しかしチベットでは(中国では?)この行為は相手によって逮捕にも相当する罪なのだ!
中国の人権基準は確かに他国とは違うようです。
http://www.stoptibetcrisis.net/pr240508.html
連帯委員会 2008年5月24日 リリース(Y女史訳)
Lady arrested for extending service to the injured
<負傷者を治療した女性、逮捕される>
確認された情報によると、2008年5月7日午後10時頃、中国治安部隊はラサ市人民
病院のヤンゾン医師と、その夫シロク氏を逮捕した。ヤンゾン医師はすでに同病
院での医師としての職責からは退いているが、同病院で勤務を続けていた。彼女
の夫であるシロク氏も政府の役職から退職しており、ラサ近郊のキレで服を仕
立てながら生計を営んでいた。
ヤンゾン医師は、政府が武力弾圧した今年3月のラサ動乱の際に、チベット人
負傷者を秘かに手当てしたという容疑で逮捕された。一方、夫のシロク氏は外国に情報を流したという容疑で逮捕された。
残忍な武力弾圧の後、そのまま数百人ものチベット人負傷者が当局より適切な治療を施されずに放置されていたことは、記憶に新しい。
<拷問の末>
中国当局は先ごろ、ペンポ・ルンドゥップとメトクンガで起こったデモで逮捕したチベット人囚人を部分的にを釈放した。しかし、監獄の中で晒されていた虐待と殴
打によって、釈放された人々はまさに見るかげもなく無残な状態になっているという。
情報筋が確認したところによると、クンガという老人が釈放から三日後、取り調べ中に受けた拷問により死亡した。
ペンポ・ルンドゥップ郡では、政府は「分離主義への対抗」と「安定の保護」と
称した一連の運動を開始している。このドア・ツー・ドアの運動には、郡区役所から派遣されたその地区に詳しい特別委員が携わっている。委員会メンバーらは地域の各家庭を訪問し、各住民に政府への忠義・忠誠を誓う文書への署名を強制して
いる。
委員会メンバーは、各家庭から僧侶や尼僧になっている家族や海外にいる家族の人
数を聞きだそうとしている。その数は日付とともに注意深く記録される。また、
それぞれの街区では引退したかつての幹部が疑わしい人々を探り出すよう求めら
れ、それ以後、大勢が逮捕されている、という報告もある。
現在も続いているチベット域内における危機的な状況を鑑み、我々は国連および
国際社会・国際機関に対して、以下の点を大至急要請する:
1. チベット域内に、独立した国際事実調査使節団を大至急派遣すること
2. 中華人民共和国政府に対して、自由な報道機関がチベット全域に無制限にアク
セスできる許可を出すよう、圧力をかけること
3. 中華人民共和国政府に、チベット全域における残虐な殺戮をやめるよう、圧力
をかけること
4. 逮捕・投獄されているすべてのチベット人を即刻釈放すること
5. 怪我をしたチベット人達に大至急、医療措置を施すこと
6. 人々の自由な移動を許可し、生活必需品が手に入るようにすること
チベット連帯委員会
(以上)
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)