チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年5月23日
地震 カンゼの戦い アバ キルティ僧院の現状
(これまでこのカムの地域、町の名前を<カルゼ>と表記してきましたが、どうも<カンゼ>が近いようです。チベット語では二文字で、最初の文字は<カル>後の方は<ゼ>なのですが、<ゼ>の前にある子音の<m>と<カル>の<ル>がリエゾンして、結果<カンゼ>となるようです。なお中国語では(ガンスーでよかったかな?))
RFAを聞いていますと、この地域からの情報は比較的入り易いようです。RFAもよく現地でも聞けるみたいで、現地のチベット人から
「RFAは本当に自分たちの役に立っている、いつも、外にも情報は伝わってるんだと思うと勇気がでる。外国の人たちも応援してくれてるのは有りがたい。<エシア ランワン ルンテンRFA>の人たちには本当に感謝している。
有難うございます。有難うございます」
という言葉を最近少なくとも内地の二人から聞いた。
いなか(のうち)なのでこれまで妨害電波基地が無かったのであろう、もっとも急いで中国は機械を設置するかもしれないと思うが。
この前の地震で被害が出たと思われるアバの状況は依然これと言った確かな情報はこちらには入っていません。
先ほど、アバのキルティ僧院からの情報をダラムサラにあるキルティ僧院から伝えてきました。それによると、
「自分たちの居るところは大したことはなく被害はないが、
アチョ、ホンユアン、バルカム地域では相当の被害が出たと聞く、しかし詳細は不明だ。
あそこで何人死んだ、ここで何人死んだという断片的な話はあるが、全体的なことはまだ判らない、電話も通じない。
でもあの地域には寄宿舎制の良い学校が何校かあってチベットの子供たちもたくさんそこに行ってたはずだという。
死んでしまった子供たちも多いと思う」
その他キルティ僧院の現状については、
「3月16日のデモの後、いまも軍隊の数は増すばかりでまったく引き揚げる様子はないという。ダライラマ法王を批判することは全員断固拒否している。
僧院からの出入りは禁止されている。
本堂に集まり法要を取り行うことも禁止されたままだ。
クラスを開くことも許されない。
いつもはこの時期は<サカダワ>もあり大きな法要が続く時期であるにもかかわらず、全く一度も法要は行われていないとのことだ」
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以下カンゼでの新たな抵抗について、
翻訳はA女史です。有難うございました。
http://www.tchrd.org/press/2008/pr20080522.html
TCHRD 2008年5月22日リリース
<中国当局、<b>カンゼのテホル・ツィツァン僧院の若い僧侶二名を逮捕>
このところ毎日報じられている、カンゼにおける相次ぐ抗議活動の特徴は2名から4名の小グループによるものが多いということだ。
TCHRD(チベット人権民主センター)に寄せられた信頼できる情報によると、5月20日ツィツァン僧院の若い二人の僧侶(20代前半)が新たにカンゼで平和的な抗議行動をおこなったことで逮捕された。
二人の名は:
ロヤン (カンゼ郡ロパ区ツァクラブ村出身)
テンジン・ノドゥプ (カンゼ郡パリンツァン出身)
彼らはカンゼの中心部にある郡庁舎前において平和的な抗議行動を行い、次のようなスローガンを叫んだ。
「ダライ・ラマ法王様、チベットへのご帰還を!」
「ダライ・ラマ法王様のご長寿を!」
「トゥルク・ブルブ・ツェリン・リンポチェを含む、政治囚を即刻釈放せよ!」
トゥルク(活仏)・ブルブ・ツェリン・リンポチェとは、5月18日に中国治安部隊によって
逮捕理由不明のまま自宅で拘束された、優れた高僧のことである。トゥルクの連
行されていった場所は、明らかにされていない。
2名の僧侶はカルゼ郡公安省(PSB)の役人によって即座に拘束され、警察車両に
押し込まれ、尋問のためカルゼ郡公安省拘置所へと連行されていった。現時点に
おける僧侶2名の状況は、一切不明である。
逮捕された僧侶二名の所属するカンゼ・ツィツァン寺院は、カンゼ郡のホー・チュジェ・ガワン・プンツォク尊師によって建立された。
カンゼ・ツィツァン寺院の他にも、彼はカんゼ郡で12もの寺院や組織などを設立して
いる。
ホー・チュジェ・ガワン・プンツォク尊師は、地域の人々によって高く敬われ、尊敬されている人物であるという。
さらに同じ場所で、同日20日テホル・ニャゲ尼僧院の尼僧3名、
アチュ (カンゼ郡リダ村出身)
ソー・チュキ (カンゼ郡ラムナ村出身)
タガ こと タシ・ヤンツォ (カンゼ郡ヌキャ村出身)
が、カンゼ郡庁舎前で同様な抗議活動を行い、即座に公安部隊により拘束された。
似たような抗議行動と逮捕については、この地域において5月11、12、14日にも起
きたことが伝えられている。
ドラカル尼僧院の尼僧 12名
カルゼ・ガンデン・チュリン尼僧院の尼僧 多数
パンリ尼僧院の尼僧 55名
が、中国治安部隊によって逮捕されている。
TCHRDはツィツァン寺院の若い僧侶2名の恣意的な逮捕ほか、同地域におけるこれ
までの数々の逮捕拘束について、深い憂慮を表明する。
TCHRDは中国当局に対して、基本的な人権と表現・意見・平和的集会の自由を尊重するよう、強く求める。
これらの権利については、中国が自身の憲法に記載しており、また同国が署名・調印・批准している数々の代表的な国際条約においても保障されている権利である。
TCHRDは、中国政府が恣意的な不当逮捕・拘束者をただちに釈放するよう、国連ほ
か関連の重要機関が介入して圧力をかけるように、強く要請するものである。
(以上)
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)