チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年5月13日
アバチベット人チャン人居住区に強い地震
昨日現地時間午後二時過ぎに成都の北西100キロ付近を中心にM7.8の強い地震があったことは皆さんご存知でしょう。
BBCでも中国政府が異例の素早い対応で都市部の中国市民を救っている様子が流されています。
まずは災害に会われた地域の中国人は可哀そうなので早く助けられますように祈ります。
低地世俗世界の中国プレートが高地聖域世界のチベットプレートにぶつかり押し上げることでこの地震は発生した。
その揺れの波紋は遠く北京や香港、ハノイ、ビルマ、タイにも及んだという。
1950年中国がチベットに侵略を開始した地域でもある。
すべてが象徴的だ。
苦しみの波紋だ。
震源地は添付の地図の中、右下<都江堰市>付近と思われる。
風光明媚な地方としても有名で北には九賽溝などもある。
チャン族が多く住地域だ。
チベットでもこのあたりはギャロンの呼ばれチベット族も多く住む。
パンダの生息地としても有名だ。
<パンダはチベットの動物です>キャンペーンを20年以上前にも日本でやった覚えがある。
6250mの名峰スーグーニアンシャンを中心に5000m級の4蜂が連なるあたりの西が震源地か。
この山には様々な伝説があるという。
その内の一つ、
「むかしむかし、チベットの山奥に暮らす四姉妹がいたそうな。ところが、末娘はいつも遊び相手にしていたパンダが豹に襲われたのを救おうとして、自らが餌食になった。
悲しみにくれる三人のん娘たちが妹を手厚く葬ると、四姉妹はそのまま美しい山になりましたとさ」
きっとブッダの前世談(ジャータカ、本生経)の同様の話からの類推でしょう。
しかしチベットらしいいい話ではあります。
誰か山の写真とかこのあたりの写真ありましたたら送ってください。
建築的には、この地域には特徴的なカッコイイ高い塔が沢山あったはず。かつて城塞の見張りの塔であったもの、高いものは40mにも及ぶ石造りの塔だが、おそらく残念ながら、見事に崩壊し去ったことであろう。
また大事なことは、今まさに激しくチベット人たちが中国に対して抵抗を試みている地域でもあるということだ。
アバ(ゥガバ、阿バ)のキルティー僧院では3月15,16日に掛け大規模なデモに対して当局が発砲することにより、少なくとも20人は死亡している。
それらの撃たれて死亡したチベット人たちの写真は今のダラムサラの町の至る所に張り出されている。
アムドの南側、及びカム全域が被害を受けたと想像する。
いまだチベット地区の被害についてはもちろん何も発表されてないし、RFAにも情報がはいってない。
山間の山道が続くこのあたり、道は閉鎖され完全に孤立状態の地域がほとんどであろう。
中国政府は今中国人をおいてチベット人を助けたりしたら、中国人から石を投げられるので、チベット人が手当てを受けられず、水も食糧も尽き果てるまでほっとくであろう。ビルマと同様、間違っても外国の援助団体をこの地区に入れることはないだろう。
或いは宣伝用に一度ぐらい飛んで行って食糧をチベット人に手渡すところを撮影しに行くかもしれないが。
RFAではそのあたりには監獄が多くあり、今現在数千人のチベット人政治犯が拘置されていると伝え、このチベット人たちの安否、今後の処遇(いよいよ食料が与えられないとか)についての憂慮をあらわした。
ああ、また多くのチベット人チャン人が見捨てられ死んで行く、、、
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)