チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年5月3日

中国政府に提出した中国の一部知識人有志の12の文書

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以下少し古い記事ですが、まだお読みのない方のために、

http://chinadigitaltimes.net/2008/03/twelve-suggestions-for-dealing-with-the-tibetan-situation-by-some-chinese-intellectuals/以下、日本語訳

1.中国の政府系メディアによる現在の一方的な宣伝のあり方は、民族の怨恨をあおり
立て、情勢の緊張を高めることになり、国家統一という長期的な目標を擁護する上で非常に有害である。我々は、こうした宣伝をやめるよう呼びかける。

2.我々は、ダライ・ラマの平和的呼びかけを支持し、善意、平和、非暴力の原則にっ
て民族紛争の根本的原因を適切に処理することを希望する。我々は、罪のない一般民衆に対するあらゆる暴力行為を非難し、中国政府には暴力による鎮圧を停止するよう強く促すとともに、チベット族民衆にも暴力活動を行わないよう呼びかける。

3.中国政府は「これはダライ・ラマ一派が組織的かつ計画的に、入念に画策した事件
だという十分な証拠がある」と主張しているが、その証拠を提示するよう希望する。
 また、国際社会のこれとは相反する見方や不信の念を改めるため、政府が国連
人権理事会を招き、証拠や事件のプロセス、死傷者などについて独自の調査を行って
もらうよう提言する。

4.我々は、チベット地区の中国共産党指導者の言う「ダライ・ラマは袈裟をまとった
オオカミ、人面獣心の悪魔だ」といった文革時代さながらの表現は、事態収拾の助け
とならず、中国政府のイメージにマイナスとなると考える。国際社会にとけ込もうと努力している中国政府であれば、現代文明にふさわしい政治のあり方を示すべきだと考える。

5.ラサで暴動が起きたその日(3月14日)に、チベット自治区の責任者が「ダライ・ラマ一派が組織的かつ計画的に、入念に画策した事件であることを裏付ける十分証拠がある」と公表したことに、我々は留意している。
 これは、チベット当局が暴動の発生を事前に予見していながら、事態の発生と
拡大を効果的に食い止められなかったことを物語っている。そこに職務怠慢がなかっ
たかどうかについて、厳しく調査して処分を行うべきである。

6.もし今回の事件が、組織的かつ計画的に、入念に画策されたものだと最終的に証明
できなければ、今回起こされたのは「人民蜂起」だったことになる。人民蜂起が発生
したことについて詳しく調査するとともに、虚偽の情報を捏造して中央と国民を欺い
た責任者は真摯に反省し、この経験を総括して二度と同じ轍を踏むことがないように
すべきである。

7.我々は、チベット族民衆一人一人に踏み絵を踏ませたり、事態収拾後に報復したり
することがないよう、強く要求する。逮捕者の裁判は公開かつ公正で透明性のある司
法プロセスにのっとって行い、真に各方面の納得を得られるものとしなければならない。

8.我々は、国内外の信頼あるメディアがチベット族居住地域で独自の取材・報道を行
うことを中国政府が認めるよう強く促す。現在のように報道封鎖を敷いていては、国民や国際社会の信頼が得られるはずはなく、中国政府の信用を損なうことになると考る。
 政府が真相をつかんでいるのなら、どんなあら探しをされようとも恐れること
はない。開放の姿勢をとらない限り、我が国政府に対する国際社会の不信を払拭する
ことはできない。

9.我々は中国民衆および海外華人に対し、冷静さと寛容さを持ち、よく考えるよう呼
びかける。過激なナショナリズムの姿勢は国際社会の反感を招くだけであり、中国の国際的イメージを損なうことになる。

10.1980年代のチベット動乱はラサに限られていたが、今回はチベット族の住む各地に広がっている。こうした状況の悪化は、チベット工作に重大な失敗があったことの表
れである。関係部門は深く反省し、失敗に終わった民族政策を根本から改めなければならない。

11.今後同様の事件が起きることのないよう、政府は憲法に明記された宗教の自由および言論の自由の権利を遵守し、チベット族民衆が自らの不満や希望を十分に表明
できるようにし、政府の民族政策について各民族の国民から自由な批判や提言が行わ
れるようにすべきである。

12.我々は、なすべきことは民族的憎しみを解消し、民族の和解を実現することであり、民族間の分裂を継続・拡大することではないと考える。
 国家が領土の分裂を防ぐためには、何よりもまず民族間の分裂を防がなければならない。したがって、我々は国家の指導者がダライ・ラマと直接対話を行うよう呼びかる。
漢族・チベット族両人民の間の誤解を取り除き、交流を広げ、団結を実現するよう希望する。政府部門であれ、民間組織であれ宗教人であれ、誰もがそのために努力すべきである。

2008年3月22日
署名した人:王力雄(北京、作家)/劉曉波(北京、フリーライター)/張祖樺
(北京、憲法
政治学者)/沙葉新(上海、作家、回族)/于浩成(北京、法学者)/丁子霖(
北京、教授)/蒋
培坤(北京、教授)/孫文広(山東、教授)/余傑(北京、作家)/冉雲飛(四
川、編集者、ト
ウチャ族)/浦志強(北京、弁護士)/滕彪(北京、弁護士、学者)/廖亦武(
四川、作家)/江
棋生(北京、学者)/張先玲(北京、エンジニア)/徐■[王+玉](北京、研
究員)/李駿(甘粛、
カメラマン)/高瑜(北京、ジャーナリスト)/王徳邦(北京、フリーライター
)/趙達功(深
セン、フリーライター)/蒋亶文(上海、作家)/劉毅(甘粛、画家)/許暉(
北京、作家)/王
天成(北京、学者)/温克堅(杭州、自由業)/李海(北京、フリーライター)
/田永徳(内モ
ンゴル、民間人権派)/■[処の下に日]愛宗(杭州、ジャーナリスト)/劉逸
明(湖北、フリー
ライター)/劉荻(北京、自由業)

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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