チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年3月23日

ハンガーストライキと念誦会

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fe3d3064.JPG9日目に入ったハンガーストライキの写真。
 今日は尼さんのグループとソガロプタ(transit School)のグループに分かれていました。

 写真には「チベットの雰囲気あるいい男だね」と添え書きつき。くっ、私の好みのタイプを見透かされているか……(と本音冗談はは置いといて)。
 ソガ・ロプタは、新しく整備された、義務教育年齢を超えて亡命してきた難民が3年間、英語とチベット語とヒンディー語を学ぶことができる学校。高等教育の機会というより、異郷インドで生活していくための最低限の知識と語学力を身につけることが最優先されている。「トランジット・スクール」という英語名なのはそのため。
 チベット人がチベット語を学ばなくてはならないのは、地方ごとの言葉(方言)の差異が強いのも一つの理由だけど、きちんとチベット語教育を受けられず、チベット文字の読み書きが苦手なチベット人も多いことが悲しい。
 チベット難民社会は「教育」整備を最優先政策にしてきたけれど、それはやはり15歳以下の義務教育年齢の子供たちが基礎教育を受ける機会を保障することが優先で、16歳以上の青年たちは長いこと、独学するか、授業料を払って私塾に通うか、とにかく自分でなんとかしなければならなかった。その点はソガ・ロプタができてかなりマシにはなったけど、この学校の環境が悪いことで有名で、宿舎が足りなくて1つのベッドで3人が寝てたり、夏には病気が蔓延したり。3年間通えるんだけど、1年とかそのへんで脱落して自分からやめてしまう青年も多い。あと、亡命してきたばかりの難民だから、行動も厳しく制限されて、自由に外出や外泊ができなかったり。
 とにかく、つまり、写真の、座り込みをしている青年たちは、ごくごく最近までチベット本土にいて、チベット本来の勉強をしたいとかダライラマ法王に会いたいとか外国にあこがれたとか、とにかく何らかの理由でチベットを逃れてきた人たちばかりなわけで。
 いま故郷はどうなっているのか、家族は無事か、自分が亡命したことが理由で取調べを受けたりしていないか――さまざまな心配が脳裏をよぎってのハンガーストライキ参加なんだ、と、彼らの心中を思うと切ない。

ツクラカンの念誦会
 もう一枚は昨日から始まったツクラカンのマニサガ(念誦会)の様子。
 法王と政府のイニシアティブではじめられた今回のマニサガ。一般の人は観音の真言であるオムマニペメフンを1億回、僧尼はターラ菩薩の長いバージョン、ドルマネルティックを同じく1億回。
 オムマニペメフンはまだしも、ドルマネルティックの方は1回がお経4枚分はあるのです。何人でやるか、何日でやるのかによる訳ですが、3週間の予定とか。もちろん夜寝てては時間が足りないので、夜中も交代制で24時間途切れなく唱え続けるのだそうです。
 プルブという降魔タイプのこわいのも唱えられています。般若心経のグループもいるとか。
 全員で唱える様は怒涛の如し、迫力がありますよ。よく見れば一般の参加者はほとんど年寄りです。デモに行けないお年寄りも参加できる抗議念誦会とも言えますかね。
 雪山の向こうのチベットには今、デモに参加し、連れて行かれた息子や親戚の安否を気遣う年寄りたちの祈りの声が満ちていることでしょう。
 心清いこの人たちの真実の祈りが世界中に届きますように。
 おやすみなさい。

 い、1億回! チベットの祈りは想像を絶するものがあるけれど、けど。
 あと、メールでは、ダラムサラ日本人決起集会と名付けて日本人会が開かれたというちょっとほのぼの報告も。長期滞在者、在住者、旅行者含めたら20人もいるんですか! うは。

 20人集まった。日本人グループのハンガーストライキ参加は来週日曜日の予定! 志願者は私入れてたった3人!(その日になればもっと増えるかも?)ついでに頭も剃るかも。
 最近、この抵抗坊主頭ファッションが流行ってます。みんな競って頭を丸めています。TCHRDの男全員が剃ったのが始まりでした。特にうけるのは国旗を顔と頭全体に描くことです!
 それとツクラカンのマニサガに行くと言っている日本人も数人いました。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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