チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2008年4月23日

TIBETAN SOLIDARITY COMMITTEE とは?

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僧侶の静かな行進このところ<委員会>発表の情報を中心にチベットの状況をお知らせしています。
ちょうど先ほどRFA(ラジオ自由アジア)の対談会でもこのことが話題になっていました。
この委員会(略称)の発足は始め3月20日の記者会見で発表されました。
私もその場にいました。
まず会の名称ですが、英語の意味からだと<チベット連帯(共同戦線!)委員会>と訳せるのでしょうが、チベット語の名称を直訳すれば<チベット政府民間合同緊急行動委員会>となります。

つまりこのチベットの緊急事態を乗り越えるために政民一体の組織を新しく作る、ということです。この日にはまだ政府外の民間5団体(チベット青年会議、チベット女性協会、9-10-3の会、民主協会、自由チベット学生運動SFT)からの回答(一緒にやるかどうか?)はすべてそろってはいませんでした。9-10-3と青年会議は会員の審議を経て答えると言ったそうです。
結局、青年会議は加わらないと決定した。その他のグループは同意した。
この会の実態はつまり亡命政府と亡命議会が団結して一つとなる、つまりいちいちの政策決定が議会の承認なく行える。ほとんどの決定は委員会の執行部が行うというものだ。
これになぜ青年会議が加わらないかと言うと、この委員会は基本的に法王の政治方針に従うものであるから、これに加わるということは、たとえば<独立>という言葉、スローガンも使えないということになる。あくまで政治的には<中道路線>ということなのだ。

もっともこの会についてはたとえばその記者会見の時にも「これは民主主義に反するのではないか?」「中国と同じにするのか?」「中国は今回の動乱はダライラマ法王の策略だ。と非難するその標的を一つに集めることにならないか?」
と厳しい質問が多く出た。これに対し委員会側は「とにかく今は緊急事態なのだから一致団結し力を集めることが最優先課題なのだ」と答えていた。

結局は各団体は委員会の話は聞くし、その全体行動計画にも従おう、しかし自分たち独自の行動計画も続ける、という「いろいろあってもいいだろう」で進んでいるのが現状です。日本の<大本営>、中国の<共産党執行部>とは違う風に進んでいます。

デモ中のスローガンは概ね<委員会推薦スローガン集>にそっているようです。デモの仕方も、これ以来やけに大人しくなってきました。
少し激しい主張

しかし例えば<チベット帰還平和行進>はこの民間5団体合同の行動ですが、デリーに到着した時点で、いったん中止になっていました。これは法王が「そうした方がいい、恩あるインドに迷惑が掛かるようなことは慎んだ方が良い」と言われたことに従ったのだという。委員会も中止するよう勧告していた。
しかし今月20日約300人のチベット人グループがインドのシリグリからシッキム北方の中国との国境ナトゥ峠を目指して再び行進を始めた。
これなどは「一応従うが、全面的に従う訳ではない」のスタンスの現れであろう。
ラジオで9-10-3代表のガワン ウッパルは「行進に参加しているチベット人の中には、独立を主張する者もいる、そうでない者もいる、今は中のチベット人を守ることが第一なのだ、個人それぞれがどう思ってるかはこの際構わないのじゃないか?
民主主義だし、大して差はないし」
という者もいれば「従ってもよし、従わなくてもいいと言うんじゃ、委員会の存在意味が無いんじゃないか?」という者もいる。
この統一のなさに対して「民主主義が浸透してきた証拠」と法王もおっしゃっています。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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