チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年4月17日
チベット文化人逮捕 植民地支配 言論統制 Free China!
<チベット文化人拉致>
昨日のチベット人女性作家拉致事件に関連して、かつて4月3日、うらルンタの方に掲載した話を一部以下再度載せます。
これはルンタレストランで偶然同席した僧侶から聞いた話です。
彼が話すに、3月29日、家族から電話があった。「今日家に警官がたくさん来て弟を連れて行った。なぜかは判らない。25日から27日まで、街で大きなデモがあった。馬で走ったグループもいる。昨日もまたあった」と話してたという。
「馬でやったのか! 馬はいいね!」と私が言うと、彼は手で首を切る仕草をして「殺されるけどね」と笑っていいました。失言でした!
「弟はその地方ではちょっと有名な歌手なんだよ。きっとそれで連れて行かれたにちがいない」
「弟さんはチベットのこと歌ったりしてたの?」
「そうだよ」
「だからか」
こんな具合でして、ちょっと街で話を聞けば、今、この時点でもたくさん、本土ではデモが続いてることが判るのです。だのにTCHRDとか政府の広報とかは発表していない。これらの件についてTCHRDに確認しても「まだはっきりしない」とばかり言ってました。しっかりしろよな! と少し言いたい。「Radio Free Asia」が一番早いようです。番組の生放送中にカムやアムドから電話がどんどん入り、状況を伝えています。まだまだデモは終わってはいないのです。
まだまだ今も、銃を向ける中国軍に対し素手で立ち向かう人々がたくさんいるのです。みんな命掛けです。逮捕者はすでに2000人を超えると思います。
どれだけの拷問が今行われていることか! 想像するのもおぞましいことです。
チベット全土に名が通った有名人、人気者、歌手、舞踏家、作家。あるただある地方で有名な歌手とか、所謂ヒーロータイプの文化人をなぜ中国政府は拉致したり逮捕するのか?これらのチベット人ヒーロー、ヒロインたちは過去に意識的にか、無意識的にかチベットの文化、心を自覚し、称賛し、高揚させるようなことがあったかもしれない。それがチベット人や外国人に受けるからにはチベット人として自然にその文化的特質を強調するようになるだろう。
そこが中国の嫌うとこなのだ。中国はチベット侵略以来、この50年間とにかくチベットの土地、人々を植民地支配するだけでは物足らず、チベット人のアイデンティティー自体を組織的に破壊することによって<チベット>を<チベットの心>を消し去ろうとしてきたのだ。
きわめて高度の平和を享受していたチベットに、突然中国の紅衛兵が押しかけ大変な殺戮、惨劇が繰り返された。1959年から文化大革命が終了するまでに、すでに全人口の五分の一にあたる120万人が中国の侵略の直接的影響で亡くなった。
文革後80年代になり少しは統制の力は緩められたが、文化とくにその核になる仏教の力を弱めようとする政策に変わりはなかった。これを同化政策という。
特にオリンピックを意識してか、この2,3年次第に締め付けは厳しくなってきていた。
一民族の言語と文化を根こそぎにしようとするこの考えはかつてのナチスの考えと等しい。1936年ナチスドイツはオリンピックを開催しようとしたが、各国のボイコットにより果たせなかった。日本の人たちはナチスと今の中国じゃ違い過ぎるとお思いの人が多いと思われるが、私は少なくともチベットに関しては同じと考える。
最近のニュースではチベット人僧侶が多くの僧院の中に拳銃や爆弾を隠してたとか、ある役所を破壊したとか、流れているけど、だいたい爆発が起こったが先月23日だとか、そんな大事な事件をなぜすぐに発表しないのか?
何かを準備するのにそれほど時間がかかったのか?
私はこんなこと演出すればするほどに中国の恥知らずの様が外国のまともな人たちには映るだけと思う。
もっとも盧溝橋事件を計画したことのある日本人ならすぐにピントきても、金のために中国に加担するのはこの際当たり前と判断するのだろうけど。
急に世界各地の中国人がオリンピックトーチにデモをかけるチベット人とそのサポーターに対抗するために結集しているという。
彼らは中国政府から移動費、滞在費、お小遣いを支給されているのだという。
これについては15日付の委員会のプレスリリース参照
http://www.stoptibetcrisis.net/pr160408.htmlまた中国人の法王を非難する署名もたくさん(もちろん)集まってるとか。
当たり前だわね。
第一言論の自由がない国の人達が署名を集めたと言ってそれに何の意味があるのか!?
言論統制された国の人の意見が国の意見に一緒した、との結果が出た、とはその国の恐怖政治が良く機能してることを証明してるわけだ。
Free Tibet!と叫ぶことが許されないなら、
みんなで<Free China!>と叫ぼう。
<Free China! Free China! Free China!>
全く12億もの囚われの人々が日本のすぐそばにいるというのに、どうしてこの人たちの現状を憐れんで<Free China!>と叫ばないことがありえようか?
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)