チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年4月10日
葬送の日
4月10日は、ダラムサラの亡命チベット人組織の「統一委員会」が決めた「葬送の日」。チベットの武力制圧で亡くなった死者を弔い、中国政府への抗議の意思を示すのです。
日本でも、西麻布や新宿などで毎日続けられているチベットの平和を祈るキャンドルライティングが、きょうは、前日にチベット人からの希望で護国寺に場所を移し、お寺の配慮で本堂に上げていただいて、追悼と世界平和の祈念の読経を上げていただき、蝋燭を供えたそうです。もちろん、ダラムサラからの呼び掛けにつながるためのチベット人たちの希望だったことは間違いないと思います。
今日は朝から葬儀でした。
早朝ツクラカンの前庭には疑似死体が20体ほど並べられました。今日からの3日間は世界中のチベット人が動員されます。インドだけでデリーに5000人、ムンバイに3000人、ハイデラバードに3000人、チナイに1000人、コルカタに2000人と言ってました。
今日から3日間はチベットのレストラン(もちろんルンタも)、商店は閉まります。学生も子供も老人も葬儀に参列するためです。
今日(10日)は、遺体も還らない現在わかっているだけで159人のチベット人犠牲者の、擬似遺体を担ぎ行進し焼き場に赴き供養して火葬する日。明日(11日)は2300人を超す逮捕者が拷問を受けず釈放されることを求める行進。明後日(12日)は銃弾などで負傷しながらも手当を受けられない負傷者が治療を受けられるように求める行進です。
壇上には緊急委員会議長が立ち、チベット内部の現状を説明しました。そのなかで「事件のあった各地の僧院はすべて軍隊に包囲されており、出入りができない状態、そのうえ水道、電気が止められている、中の僧侶たちは食糧も尽きて命に危険がある状態のところが多い。各地でデモに加わった僧侶や一般人が逮捕を恐れ、山や森に逃げ隠れている。しかし周辺には軍隊が到る所におり、検問所も多く、移動することは禁止されている。助ける手段がない、この人たちも危険な状態にある。拘置所や監獄では非情な暴力が振るわれる」との報告もありました。
その後、4kmほど離れた火葬場まで疑似死体を担いで行進しました。喪に服した黒いチュバの女性も多く見られました。行進中、スローガンは何もなく、終始「菩提心の祈り」のお経が唱えられました。供養の儀式の後、河原に並べられた死体に火が放たれました。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)