チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年4月11日
囚人を解放せよ!拷問をやめよ!
今日のデモは、今回の動乱で連れ去られ、拘置所、或いは既に監獄にいるチベット人たちを解放せよ! 拷問をやめよ! 正当な裁判を開け! と主張するものでした。
ただ、今日もスローガンを叫ぶことは一度もなく、「*菩提心の歌」(?)のみ唱え続けていました。最後に「*ツェメーユンテン」の祈りで締めるのが最近のデモのパターンです。
こうした連れ去られた人たちの話の一つとして、今日TCHRDにアップされてた記事を以下要約紹介します。
<拷問された僧侶が釈放されたが、彼は精神錯乱状態であった>
先の4月1日にラプラン僧院の僧7人;
Labrang Monastery in Sangchu County, Kanlho “TAP”, Gansu,
on 1 April 2008. The arrestees are: 1) Gendun Gyatso, 30
yrs, 2) Gyurmey, 40 yrs, 3) Gelek Gyurmey, 30 yrs, 4)
Sangay, 30 yrs, 5) Samten, 32 yrs, 6) Yonten, 34yrs, and
7) Thabkhey, 30 yrs.
が逮捕された。そのうち最後にリストアップされているタップケは数日後に解放された。しかし、その彼の体は全身痣だらけで、精神錯乱状態だという。明らかに拷問を受けたのだ。その他の僧侶たちも同様の拷問を受けている可能性が高い。責任を逃れるために、拷問の末死にかけたり気が狂った拘置者を家族に引き引き取らせるのはいつもの中国のやりかただ。
9日に外国プレスの前に現れた僧侶たちの記事も短く出てます。
詳しくは
http://www.tchrd.org/press/2008/pr20080409.html
まったく、この拷問の話は9-10-3(グチュスム)のメンバーから嫌というほど聞いていましたが、それがまた、今度はチベット全土で、今まさに行われているのです。
ラジオでは、3日に多数の死傷者が出た、ギャマのトンコルゴンパのいまの状況を現地からの電話で伝えていました。まず、その日に銃弾を受け治療を受けれないまま、死んでしまったものが2人いると名を上げて報告した。まだ銃弾が体の中に入ったままの者もいる。中国側は6日、僧院の僧侶に対し「5日以内に全員自首せよ、さもなくば僧院を破壊する」と布告した。400人近くいた僧侶のうち今僧院の中にいるのは老僧と子供の僧ばかりで、他のおよそ300人は山に逃げたままだ。デモの後連れ去られた人の中で帰された者もいるが、まともな者はほとんどいない、多くのものが歩くのも困難な状態で帰って来る。また当局は逮捕者の家族に対し、釈放させたければ1万元払え、と言って来ているという。電話してきた人は年配者であるのか、「まるでまた文革の時代に戻ったみたいだ!」と最後に言った。
「ツェメーユンテン」の日本語訳を添えました。
もう一つの「菩提心の祈り」はチベット語の発音では
ジャンジュップ センチョック リンポチェ、
マケパナ ケギュルチ、
ケワニャンパ メパネ、
ゴンネ ゴンドゥ ペルパルショー
意味は
「至高にして尊い菩提心よ、まだ生まれ出でずば、今まさに生れよ、すでにこの心、生れしものならば、衰えることなく、益々大きくならんことを」
です。
※菩提心(他の有情を救うために悟りを得ようと願う、決心する心)
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)