チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2017年7月16日
インド、ベナレスでチベット難民が中国政府に対する焼身抗議
男子学生寮ホールの監視カメラに映されていたテンジン・チュインが炎に包まれながら出口に向け走る様子。
7月14日、現地時間午前9時頃、インド、ベナレスにあるチベット中央大学(故サンスクリット大学)の男子学生寮のホールでテンジン・チュイン(བསྟན་འཛིན་ཆོས་དབྱིངས། )、19歳(1998年2月12日生)が中国政府のチベット政策に抗議する焼身を行った。目撃した同僚が直ちに火を消し病院に運び込んだ。
現在彼はベナレス(サルナート)の病院に収容され治療を受けている。全身の3分の2の火傷を負い、医師は「生命は保証できない状態」とコメントしている。
目撃者の証言によれば、彼は炎に包まれながらも「チベットに勝利を!」と叫んだという。
テンジン・チュインの焼身は、チベット亡命政府首相ロプサン・センゲが同大学の中央ホールで学生に向かい演説を行っている最中に起こった。それ故に一部学生の間では「首相に抗議する意味もあったのでは?」との疑惑が湧いていたが、意識があり話すことができる彼は病院で、その疑惑を否定し「チベットのために焼身したのだ。チベットに自由がないからだ」と明言している。
テンジン・チュインは焼身の前に親友宛に「遺書」を書いている。その中で彼は「自分の体はチベットのために存在する」と書き、「チベット語を忘れないように」と訴え、友人や両親に対し「泣かないでほしい。皆さんが幸福に生きられますように。来世で再会できますように」と結んでいる。
テンジン・チュインは南インド、コレガルキャンプの出身であり、現在チベット中央大学の中観学上級の生徒である。
彼はチベット青年会議のメンバーであり、かねてよりチベットの自由のために活発に活動していたという。
チベット本土以外でのチベット人の焼身抗議はこれで7人目、本土を合わせ157人が中国政府に対する焼身抗議を行ったことになる。
中国政府がチベット人に対する監視、弾圧を強化する限り、若者を中心に、非暴力的手段ではあるが、命をかけても中国政府に抗議しようという人は絶えることがないと思われる。
参照:7月14日付RFA英語版
同チベット語版
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筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)