ルンタプロジェクトとは

ルンタプロジェクトの「ルンタ(lung ta)」とは、チベット語で「風(lung)の馬(ta)」。チベットでは、風の馬ルンタが風に乗って空を駆けて仏の教えを広め、願いを天に届けてくれると信じられており、家々の屋上や峠には、ルンタを刷った5色の旗、タルチョが風にはためいている光景がみられます。また、峠などでルンタを刷った5色の小さな紙を空高く撒くこともあります。

チベット人たちの切実な思いが天に届きますように、チベットに平和と自由がありますように――ルンタプロジェクトは、そんな願いを込めて名づけられた、1997年設立の日本人有志によるNGOです。ダラムサラを拠点にした現地での難民支援活動と、日本国内でチベット文化やチベット問題を知ってもらうための活動を行っています。

代表:中原一博

 

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

これまでのルンタプロジェクトの活動内容

「ルンタハウスの建設と運営事業」 1999年9月~現在

ルンタプロジェクトは1999年9月、ダラムサラに4階建ての難民自立支援施設「ルンタハウス」を建設。チベットで自由を訴えて投獄された経験をもつチベット人たちによる自助グループ「The Gu-Chu-Sum Movement of Tibet (グチュスムの会)」を現地協力団体として共に運営にあzたってきました。

ルンタハウスは、教育や技能習得の機会のない、しかしチベット本土へ戻ることができない事情を抱えた難民を対象とした教育事業・自立支援事業を行っています。現在、約60人の難民がルンタハウスで生活しており、また病院通院や法要などのためにダラムサラに一時滞在する貧しい難民たちにも食事と宿泊を提供しています。ルンタハウスでは日本食レストラン(ルンタレストラン)、手工芸工房といった収益と技術研修をかねた事業を行い、売上をルンタハウス運営費にあてています。併せて、英語・コンピュータコースの開催、チベット人のライフヒストリーの出版、グチュスムの会のメンバーが投獄経験を証言するツアーやキャンペーン等も行っています。

「里親教育支援事業」 2001年2月~現在

ルンタプロジェクトではチベット難民孤児や低所得のチベット難民世帯の児童へ学費・養育費の支援をしています。2015年末までに里親になって下さった方々からお預かりした計968万円を児童53名の教育支援として難民学校や児童の保護者へ届けました。2016年現在では中学生3名、高校生1名の支援をしています。いずれの児童の里親さんも低学年のころから継続して支援をして下さっている方々です。(現在、里親の新規募集は行っておりません)

「HIV感染予防・エイズケア事業」 2006年10月~2013年

2006年10月からは、保健衛生事業としてチベット成人難民、中高生を対象としたHIV感染予防・エイズケアに取り組みました。チベット難民社会全体におけるHIV感染者数は公表されていませんが、2006年に行われた20代の若者45人を対象としたHIV抗体検査の結果は、45人中2人が感染していたという深刻なものでした。インドにて亡命生活を営むチベット難民は季節労働に従事する割合が多いため、HIV感染の危険が高いグループ(high risk group)に分類されます。

チベット難民社会における就業形態は、ほぼインフォーマルセクターで占められ、全体の70%がインフォーマルな職種に就業することで収入を得ています。そのうち92%がセーター等を売る「露天商」や「季節労働者」としてインドの都市部へ定期的な出稼ぎを行っています。
さらに、チベット難民の若者間でのドラッグの蔓延もHIV感染のリスクを高める要因になっています。失業率の高さは、チベット難民社会が抱える大きな課題のひとつであり、失業率は少なく見積もっても7.7%になるといわれています。難民居住区によっては15.6%(オリッサ州プンツォックリン)にも及ぶ地域もあります。高い失業率がもたらす閉塞感、フラストレーションは若者の間でよくみられ、ドラッグが蔓延する一因となっていると考えられます。

当事業の立ち上げ当時、これらの高いリスク要因にもかかわらず、チベット亡命政府のHIVエイズ対策への取り組みは遅れていると言わざるを得ない状態でした。厚生省にはHIVエイズ研修を受けたスタッフは一人もなく、エイズ問題に対応できる人材が不足していたうえ、エイズ感染者への医療費支援もなく、カウンセリング等のメンタルケアサービスも行われていませんでした。加えて、難民学校では性教育やエイズ教育を受ける機会がなく、次世代へのHIVエイズ予防対策も遅れていました。

これらの状況から、ルンタプロジェクトは予防からケアまでを含む総合的なHIVエイズ予防事業がチベット亡命社会に必要であると考えるに至り、2006年にアセスメント、感染予防、感染者ケアの包括的プロジェクトを開始しました。

2007年4月にはチベット青年会議、チベット難民政府デレック病院、チベット伝統医療院、アルコール依存症対策NGO「クンペン」のスタッフらとローカルNGO「CHOICE」を設立し、事業の現地化をはかりました。2013年の事業終了までにインド全土の難民居住区、学校を対象に161回のワークショップを開催し、約20,000人に対しHIVの感染予防について学ぶ機会を設けたほか、若者を対象としたコンサートやチャリティランを開催し、難民社会へHIVエイズ予防の重要性を広く訴えました。またケアとして、HIV感染者の自助グループを形成し、併せてエイズ患者を対象とした里親支援制度を立ち上げました。

これからのルンタプロジェクトの活動内容

「ネパール大地震緊急・復興支援」 2015年5月~


2015年4月25日にネパールで発生したマグニチュード7.8の大地震は死者約9,000人、負傷者約21,000人と甚大な被害をもたらしました。全半壊した家屋は79万戸にも及びます。ルンタプロジェクトでは、被災者の中でも特に社会的弱者であるチベット難民とヒマラヤ山岳地帯で暮らすチベット系民族を対象とした緊急・復興支援を行います。

カトマンズ市内にあるチベット難民居住区ジャワラケルを中心に被災したチベット難民への支援と、今回の震災で特に被害の大きかったヒマラヤ山岳地帯のランタン地区での支援を検討しています。ランタンは高山植物の花が多くみられることで有名で、チベット仏教を信仰するチベット系民族が主に暮らしていました。世界中からトレッカーたちが訪れた美しい村々は地震による雪崩と地すべりで跡形もなく消え、総人口650人のうち175人が亡くなっています。

ルンタプロジェクト代表の中原一博は2015年5月21日から7月10日にかけてネパールに入り、被害の状況把握と支援のニーズアセスメントを行い、被災者に対する緊急支援を実施しました。ルンタプロジェクトでは震災直後の緊急支援にとどまらず、長期的な視野を持ち、コミュニティの再建を支援していく予定です。
(これまでの活動報告、及び今後の活動計画についてはこちらをご覧ください)