チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2015年11月13日
尼僧院を破壊 100人以上追放
中国当局はチベットの宗教弾圧の一環として最近自治区内の尼僧院を破壊し、100人以上の尼僧を追放した。
RFA(自由アジア放送)などによれば、9月30日、チベット自治区ナクチュ地区ディル県の役人たちが突然ペカル郷にあるチャダ尼僧院(ནག་ཤོད་འབྲི་རུ་རྫོང་བན་དཀར་༼པད་དཀར་༽ཡུལ་ཚོའི་བྱ་མདའ་དགོན་དཔལ་ལྡན་མཁའ་སྤྱོད་གླིང་།)に押しかけ、106人の尼僧を追放した。当局は追放の理由として「正規の尼僧証明書を持っていない。この尼僧院に割り当てられた尼僧の数を超えている。ダライ・ラマを非難しなかった」ことを挙げているという。追放された尼僧たちの内、遠くから来ていた多くの尼僧は周辺県の責任者に引き渡されそれぞれの家族の下に送られたという。
当局は尼僧を追い出した後、尼僧たちが住んでいた僧坊を壊し始めた。理由として「ここに新しく政府が金をだして、僧坊を建て、尼僧たちのための養老院と学校を建てるためだ」と言っているという。もっとも、チベット人は誰もその話を信じていないという。この尼僧院は500年以上の歴史があるが、壊す前に当局は価値のありそうな仏像やお経をすべて持ち去ったという。ある尼僧は「まるで文革時代のようだ」と表現した。
僧坊が破壊され、居所がなくなった尼僧が付近の民家に宿を借りようとするが、当局は許可なく尼僧を自宅に泊めることも禁止しているという。
一方尼僧院内では連日、ダライ・ラマ法王を非難することを強要する「愛国再教育キャンペーン」が続いているという。
この尼僧院では、去年終わりにも26人の尼僧が追放された。チベット自治区内でもこのディル県を始めとするナクチュ地区は当局の監視と弾圧が一番厳しい地域であり、特に、僧院や尼僧院は常に当局からの嫌がらせを受けている。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)